第74話 作戦会議vsカゴリア騎士団
それから急いで戻り、1週間かけてグレイロードに戻ってきた。
「父上、申し訳ありません」
俺は勝手なことをしたことを、父上に頭を下げて謝る。
「ユマ。お前のせいではない。話を聞く限り、私なら殴っていたところだ」
父上はそう言ってなんでもないと言ってくれる。
「ありがとうございます」
「いい。それよりも、今回の敵は手ごわいぞ。どうするか話し合おうではないか」
ということで、俺、父上、シュウ、アーシャ、シエラ、セルヴィー騎士団長、ヴァルガス、ゴードン、メア殿下にミリィという面子で集まって、カゴリア騎士団を迎え撃つ相談を始める。
「まずは僕の方から情報を共有させていただきます」
そう言って話し始めたのはシュウだ。
「まず今回の敵はカゴリア騎士団およそ2000。移動の時間なども考えて後3週間ほどでこちらの領内に到着するかと」
「2000? 騎士団は5000いるのではないのか?」
「治安維持で領内に散らばっているので、集めるのに時間がかかるそうです。それは待てないという公爵の指示でそうなりました」
「なるほど、ではこちらは?」
父上の言葉に、シュウは難しい顔をする。
「こちらは……本気で動員すれば1万2000は動かせると思います」
「本気で?」
「はい。他との領境や、警護の兵士を最低限にした場合です」
「では普通にした場合は?」
「1万くらいでしょう。これくらいであれば問題なく動員して、糧食も3か月は問題ないくらいはあります」
「流石だな」
「ただ、それは他の領地が何もしてこない場合です」
そういうシュウの言葉に、俺は嫌な予感がした。
「シュウ、確定でなくてもいい。分かっていることを話せ」
「はい。実は、ハムロ伯爵がグレイル領との境目に軍を進めています」
「あいつら……クルーラー伯爵にそちらの方は任せられないか?」
「まだ支援を始めてそんなに経っていません。恐らく来られないかと……」
「だが、兵の派遣くらいは打診しておいてくれ」
「かしこまりました」
シュウは頷き、父上に聞く。
「ちなみになのですが、他の穏健派の方々からの援軍は期待できないのでしょうか?」
「難しいだろうな。頼めば送ってはくれるだろうが、大した量にはならん。それどころか指揮系統が増えて指示が間に合わずに邪魔になるかもしれん」
「わかりました。それと、もう一つ悪い報告がありまして、中小領もこちらとの領境に兵を派遣しているそうです」
「どれだけ手を伸ばしているのだあ奴らは……」
「ケラン公爵と仲のいい貴族達を使っていることから、中立派としてはカゴリア騎士団の味方なのでしょう。そのあたりを考えると、まだ兵士を減らす必要はあるかと」
という結構絶望的な報告をシュウはしてくる。
「シュウ、それで、カゴリア相手にはどれくらい動かせる?」
「6000ほどでしょう。セルヴィー騎士団長にはハムロ伯爵の方に3000、ヴァルガス副騎士団長は中小領に3000で考えています」
「6000……。カゴリア騎士団相手に6000か。中々熱い戦いだな?」
ゲームをやっていた時の俺に6000の兵士で2000のカゴリア騎士団を倒せと言われたら戦場を海にでもしてくれと言ったことだろう。
3倍の数があろうが関係ない。
正直、それくらいしなければ勝てないような強力な軍隊なのだ。
しかも、こちらの指揮官は他の場所に派遣もしなければならない。
「私がハムロ伯爵の方を対処いたします」
「俺は諸侯の方をやりますぜ」
そう言ってくれるのはセルヴィーとヴァルガスだ。
「ああ、任せた」
「ちなみに、私の方はシュウの想定から1000は減らせます」
「俺の方も1000は減らせますね。あいつらに3000は多すぎますよ」
「しかし」
「その代わりと言ってはなんですが、アルクスの弓部隊を下さい。それで耐えることはできます」
「俺も同じです」
「2人とも……」
今回の敵にアルクスの弓部隊は相性が最悪だ。
なので、この申し出は普通にありがたい。
だが、
では8000対2000。
これなら戦いにはなるだろうか。
「よし、では……後は出来る限り罠も仕掛けておく。場所はマルコス平野でいいと思う」
「平野ですか? 北部は山がちなので、わざわざ平野を選ばなくてもいいと思いますが」
シュウの言葉に、俺は答える。
「山でゲリラ戦で戦ったとしても、時間が延びるだけだ。その間に俺達は戦場に張り付いていなければならず、その間に急進派は様々なことに手を出せる。だから今回は短期決戦にしなければならない」
「なるほど……」
「それに、山での戦いだとカゴリア公爵がどれだけ被害を出しているか理解しにくいはずだ。分かりやすくするためにも平野で戦う方がいい」
「勝てること前提ですが、大丈夫ですか?」
そう言ってくるゴードンに俺は答える。
「勝つ。最初から勝てない戦いならしない。今度はこちらが戦場を選べるんだ。今の間に平野に仕掛けも行っている」
ようは短期で分かりやすく敵を狩り取って行けばいい。
そうしたら、あいつは降服する道を選ぶはずだ。
次に口を開くのはメア殿下だ。
「父の兵は使わなくてもよいでしょうか?」
「近衛騎士団のことか?」
「はい。今回の戦も父なら止めてくれるのではないかと思っていたのですが」
メア殿下に、父上が答える。
「陛下の言葉は公爵には届かなかった。戦争を止めるように文を送ったらしいが、貴方の息子として相応しいように戦うと返ってきたらしい」
「……では近衛騎士団を動かすように頼んでみます」
「今彼らを王都から離したくはない」
「王都はそこまで危険なのですか?」
「隊長は複数人いるが、誰がどこに付くかのセリも行われているらしい。第一近衛部隊は問題ないが、それ以外はどこについているか怪しい。ヘタをしたら敵方について兵力が増えかねんし、不意打ちで第一近衛部隊が消えたらどうしようもない」
「……分かりました」
メアは悔しそうに俯く。
「その気持ちは嬉しい。さて、後はどうするかだが……ユマ。任せるぞ?」
「はい。兵力差は4倍あるのです。いくら強敵と言えど、勝ってみせます」
「期待している」
*******
***???視点***
「はぁはぁ」
早くこの情報を伝えねば。
この情報いかんで大変なことになる。
なんとかして伝えなければ……。
ドスッ。
「ぐふぅ」
「はい。ざーんねん。行かせませーん」
「く……そ……」
「こっちの被害ばっかりは許せないからねー。ちゃんと……そっちも死んでもらわないと」
この情報は……2000では済まないことを……伝えねば……。
しかし、身体は二度と動くことはなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます