第52話 ハルバード

「俺はユマ様にはハルバードがいいと思います」

「俺も同じことを思っていた」


 ハルバード、それは『ルーナファンタジア』でも最強の武器として扱われていた物だ。

 ハルバードとは、槍の先端に様々な武器がついていると考えてもらえば分かりやすい。

 先端は突けるように槍になっていて、その横には相手を叩き斬れるように戦斧状に、その反対側には相手の武器を絡めとれるように鉤状になっていることが多い。

 中華最強の呂布の持っている方天画戟を想像してもらえば分かりやすいだろう。

 と、ここまでいいことを語ったけれど、問題が一つある。


「扱いが難しいのだったな?」


 ハルバードは突く、斬る、引っ掛ける、等多彩に行えるが故に、その扱いを習熟するのは大変難しい。

 ユニットごとに相性のいい武器があり、その習熟度もある。

 ハルバードは最強だけれど、扱いが難しく習熟度が上がりずらい。

 なので、万人が持つ武器ではないのだ。

 だが、ユマなら、俺ならそれを解決できる。


「ええ、ですが、ユマ様なら問題ないかと。それに、以前雇った方に武器の扱いが素晴らしい方がいます。あの方に扱いを聞けば、ユマ様ならすぐにでもと思えます」

「なるほど、早速聞いていこうか」


 ということで、俺は相手を見つけて話をする。

 彼は武芸大会で仕官してくれた男で、名前はムゲシ。

 どこかあの名前を彷彿ほうふつとさせるが、大事ではないのでいい。


「ムゲシ頼む。俺にハルバードの使い方を教えてくれ」

「あっしがですかい!? ユマ様のお願いであれば喜んでお引き受けしますが、あっしの力でユマ様の力になれるかどうか……」

「それでもできること……基礎等だけでもいいから教えてくれ」

「分かりました。これでもあらゆる武器を使いこなすと決めた身。できることをさせていただきやす」

「頼む」


 それから、俺は彼からハルバードの使い方の基礎を教わった。


****** ***ムゲシ視点***


 ユマ様にハルバードの使い方を教え始めて3日が経った。


「ユマ様……あっしが教えられることはもう何もありません」

「何? 早すぎじゃないか?」

「いえ、事実です。ユマ様の成長速度が早すぎるのでやす……」


 これは本心からで、あっしが教えられることは本当にもうない。

 ハルバードは主に突く、叩き切る、引っ掛けるの3つを使いこなす必要がある。

 ユマ様はそれを1日で1つずつ習得されていったのだ。

 後はそれを実戦で使い分けて行くしかなく、あっしができることはない。


「そうか……助かった。ムゲシの教え方が上手かったのだな」

「そんな……あっしは全て中途半端だっただけでやす」

「お前が色々と学んでくれたお陰で、兵士達に武器の使い方や選び方を伝えることができた。お前のお陰だ。自信を持っていい」


 ユマ様にそう言われて、胸が高鳴る。

 ユマ様という最強の男にそう言われて、嬉しくなっただけだ。

 それに、自分に様座な武器の使い方を指導するという道もあったのかと思う。


「ありがとうございやす」

「ああ、だが、ムゲシ以上のハルバード使いは知らないか? 出来れば使い方を習いたいのだが……」

「そうでやすね……。少し聞いてみようと思います」

「いるのか?」

「いますが、相手がいいと言ってくれるかは怪しいので、名前は出さないでおくでやす」

「そうか。必要があったらシュウを頼るといい」

「わかりやした」


 ということで、ユマ様は再び訓練にいく。

 あっしは早速シュウ殿の相談に行く。


「シュウ殿、少し相談が」

「これはムゲシ様。僕にご用ですか?」

「ええ、実は……」


 あっしがその話をすると、シュウ殿の顔は変わっていく。  目を見開き、手で顔を覆う。


「なるほど、ユマ様。そこまで……分かりました。手配しておきます。ムゲシ様。あなたのお名前もお借りしてよろしいですか?」

「ええ、もちろん。ですが、可能のでしょうか?」

「ええ、ユマ様はもしかしたらここまで読んでいたのかもしれませんね。僕では考えられませんよ」

「なんのことでしょうか?」

「いえ。すぐに分かることでしょう。僕は準備がありますので、領主様の元に向かいます」

「はぁ……」


 シュウはとても楽しそうな顔をして、走り去ってしまった。


 まぁあっしはユマ様に付き従うだけだ。


******


 ムゲシの教育を受けてハルバードの使い方を習ったが、それ以降あまりいい訓練は出来ていない。

 相手になる者がほとんどいないからだ。


「ユマ様。少しよろしいですか?」

「シュウ。どうしたのだ?」

「単刀直入に言います。ムゲシのハルバードの師匠の元に行きたくはありませんか?」

「お! それはぜひとも行きたいと思っていた所だ!」


 訓練としてやれるなら、それはとても頼もしい。

 俺も鍛えられるし、俺が強くなれば他の者達も鍛えられるかもしれない。

 でも、グレイル領内にハルバードの使い手で強い奴っていたかな?

 ユニットは結構覚えているけれど、適性があるのはいなかった気がする。


「では、ぜひともアルクスの里の弓兵団とユマ様直下の兵団を率いてクルーラー伯爵の領地に向かっていただきたい」

「………………ほう」


 俺は訳が分からず、そう漏らすので精一杯だった。

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