第49話 説明
俺達は鉱山の秘密の通路から出て、外に出た。
すると、森の中からアーシャが走り寄ってくる。
「ユマ様! 無事だった?」
「ああ、アーシャ。無事だったぞ。シュウが対策をしてくれていたからな」
「シュウが?」
アーシャはシュウの方を向くと、彼はゆっくりと頷いて話してくれる。
「ええ、敵がユマ様達を狙うならほぼ確実に鉱山だと狙いをつけていました。なので、崩落対策にわざと穴を開け、爆破させるならここですよ。と教えておいたのです。そして、前日にそこに仕掛けられているのを確認し、退路のある場所で待機していたのです。それで、そちらはどうですか?」
「4人いたから縫ってある」
アーシャの言葉が分からずに俺は聞く。
「縫う?」
「うん。あ、死ぬと面倒だから来て」
「わ、分かった」
俺達はすぐに移動して、アーシャが示した場所を見て理解した。
「なるほど、これは確かに縫うだな……」
4人の男達が矢で地面に縫われていた。
「こいつらの中の1人が魔力を使って、次の瞬間に地響きが起きた。だから崩落をさせた奴だと思う」
「なるほど、よくやってくれた」
「うん。褒めて」
「あ……ああ」
俺はアーシャの頭をフードの上からそっと撫でる。
彼女は嬉しそうに為すがままだ。
その様子を見て、シュウが俺の代わりに指示を下してくれる。
「兵士達は弓矢を抜いてそいつらを拘束しろ。諜報員だから頑丈ですぐには死なないと思うが、情報を早く集めたい。急げ」
「はっ!」
ということで、彼らは抱えて俺達はすぐに鉱山を出て、館に戻る。
その道中、俺はネイトに話を聞く。
「ネイト、こいつらの顔に見覚えは?」
「……ある。俺にジェクトラン男爵は不当に領地を奪われたと言っていた連中だ。俺はそいつらの言葉を聞いて今回のことを起こした」
「こんな怪しいやつらの言葉を信じた理由は?」
「こいつらは前からジェクトラン男爵の館に出入りしていた。レックス様と一緒に歩いている姿も見たことがある。だから信頼していた」
「なるほど……」
ということは、こいつらがネイトやレックスを扇動し、ジェクトランの町で扇動させたり、バメラルの村を襲わせた犯人に繋がる奴等という訳だ。
「シュウ。こいつらには何をしてもいい。必ず情報を引き出せ」
「かしこまりました。必ずや情報を引き出してみせます」
「頼んだぞ」
「はい!」
「よし、俺達は男爵の所に報告に行き、グレイル領に帰る」
「そうですね。ここまでやっておけばあとは男爵だけで問題ないでしょう」
俺の提案にシュウもそう言ってくれるので、安心して頷く。
「ああ、それではそいつらも連れて戻る」
ということで、俺達は館に戻って報告をした。
「なんと……もうそこまで?」
「ああ、こいつらを治療、拘束してくれ。グレイル領で急いで取り調べをする」
「そいつらが……」
「ああ、レックスと繋がっていたようだし、バメラルの村を攻めた奴等と繋がりがあるかもしれない」
「……」
男爵の瞳に殺意が宿る。
俺はそれを止める。
「じぃ。情報が分かり次第伝える。だからこちらに任せておいてくれ」
「は……失礼いたしました。それでは、よろしくお願いいたします」
「ああ」
俺は皆の方を向いて口を開く。
「では、俺達はグレイル領に戻るぞ。父上も議会に行っている。まぁ、俺がいなくても問題はないが、シエラだけだとどうなるか少し不安だからな……」
「それは……そうですね」
「やりすぎてそう」
「ああ……」
というシエラへの別方面への信頼があったので、急いで戻ることになった。
しかし、その前にネイトが立ちはだかる。
「おい、雇って翌日に出て行くんじゃねぇよ。唐突過ぎるだろうが」
「情報はちゃんと開示しただろう? 情報は民達に伝えて教えてやれ」
「いいのかよ……」
「お前なら問題ないだろう」
というか、ネイトに喋られて困るような情報は与えていない。
元々このジェクトラン領がどうだったのか……という過去の物でしかない。
大事な情報も多少は教えても大丈夫だと思うけれど、そちらの方は試用期間をとりたいところだ。
働き方などを見てから決める、ということも昨日男爵と話をつけてある。
「……まぁ、その期待には応えてやる」
「ああ、もうそそのかされて反乱等起こすなよ」
「分かっている」
ネイトはそう言ったかと思うと、頭を深く下げる。
「感謝する。我が主ユマ・グレイル様」
「……」
「貴方様のお陰で友人達や仲間……皆が傷付かずに済んだ。そして……真実を包み隠さず教えてくれたことも」
「……」
「俺は優秀ではないかもしれないが、残りの一生を貴方の部下として働く。好きに使ってくれ」
「なら男爵について仕事を覚えろ。そして、この領地をしっかりと発展させろ、この
「! はい!」
俺はそう言ってネイトにも別れを告げてサッサと馬車に乗る。
すると、アーシャが首を傾げて聞いてきた。
「さっきのあれ、どういう意味?」
「特に意味はないさ」
俺はそう言って流そうとする。
しかし、シュウがそれに答えた。
「あれはジェクトラン領もグレイル領同様に見てちゃんと発展させて守ってやるよ。っていうユマ様の気遣いを口に出してあげたんだよ。忠誠には報償を与えないといけないからね」
「なんで意味はないとか言ったの?」
「それは言わないのがかっこいいと思っているからだよ。アーシャ。今はそっとしておいてあげるんだ」
「分かった。ユマ様の顔が赤いから心配だけど」
「大丈夫、きっとすぐに収まる」
俺は……顔から火が出るほど熱さを感じていた。
恥っずぅ。
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