第33話 鉱山の扱いについて

「ユマ様! 派遣した捜索隊ですが、本当に鉄鉱山を発見しました!」

「シュウ。本当か?」

「はい! そのことで領主様がお呼びです! 急いで来てください!」

「分かった。すぐに行く」


 俺は彼を連れて急いで父上の執務室に入る。


「ユマです。入ります」

「シュウです。失礼いたします」


 部屋の中では、父上やゴードン、騎士団長にヴァルガス、アーシャにシエラ等、結構な面々がいた。


 最初に口を開くのは父上だ。


「良くきたなユマ。何の話かは聞いているか?」

「はい。鉄鉱山が見つかったとか」

「そうだ。それに関して開発をすぐにしてもいいのか。それともジェクトラン男爵領との関係を考えて後回しでもいいのかを話合っていた」

「今のところの意見は?」

「男爵領もそろそろ鉄が尽きると聞くし、開発しても問題ない派が多数だな。所詮相手は男爵領だ。そこまで考える必要はないし、それに、鉄鉱山を開発するには時間がかかる。時期を待っていたら宝の持ち腐れという話だからな。それに、バメラルの村が栄えるきっかけにもなる。ちょうどあの騒動から持ち直してきているし、やるべきではないか? ということもあるだろう」


 父上がそう言って、まとめてくれる。

 個人的にも賛成だ。

 だけど、少し足したいことがある。


「俺も基本的には賛成です」

「基本的には?」


 父上が目を細めて聞いてくる。


「はい。開発に関してですが、ジェクトラン男爵領から人材を借りれないかと思いまして」

「……話してみろ」

「はい。鉱山の開発には時間がかかる。それは分かります。しかし、その開発を既に開発した経験者達を招けば大分早いのではないかと」

「だが、そうそういるか?」

「そこでジェクトラン男爵領の人材を借りるのです。彼らは鉱山でのやり方を熟知しているはず。彼らを招くことが出来れば、我々としても新たに探すよりはいいかと」

「だが、貸してくれるか? 彼らにも鉱山はあるんだろう?」


 その疑問は最もだけれど、ちゃんと考えがある。


「ええ、貸してくれるかと思います。彼らの鉱山は枯れかけている。という話を先ほどしていたでしょう?」

「事実かどうかは知らんぞ? あくまで噂だ」


 父上はこう言っているがこれは事実だ。

 というのも、ゲームが始まった段階で結構残り少なく、グレイル領をとってから、鉱山捜索で今見つかった鉱山を発見する。

 ということもチュートリアルの様な物なのだ。


 だから、彼らの鉱山が大分危険な位置にあることは俺だけが知っているから出来ること。


「恐らく事実でしょう。少なくとも採掘量は減っているはずです。でなければ、そんな噂は出ませんから」

「まぁ……確かにな」

「なので、別に全員でなくてもいい。何十人かの人々を借りて、彼らへの給金と、ジェクトラン男爵領への人材の租借料として、ある程度をお支払いすれば、彼らとしても嫌な顔はしないかと」

「なるほど」

「普通に人材を引き抜くだけでは確実に嫌な顔をされますが、人を借りて、その対価に支払いをすればこれから使わない人材で収入を得られて、文句はないかと。そして鉱山が枯れる前に新しい産業を開発するか、どうするかは彼らの考えることですが」


 こうしておけば、ジェクトラン男爵領との関係は良好なものになると思う。

 最初に人材を借りたりする費用でかさんでしまうかもしれないが、今のグレイル領は結構裕福だ。

 それに、のちのち鉱山から得られる収入を考えたら微々たる物。

 やらない手はない。


「流石ユマだ。そこまで考えていたとは」

「いえ。たまたまです」

「流石ダーリンよ。強い上にそこまで考えているとはね」

「ユマ様ならやってくれると知っていた」


 父上に続いて、シエラとアーシャがそんなことを言ってくる。


「たまたまだよ。それよりも、その説明の使者には誰を?」


 俺が父上にそう聞くと、父上は少しだけ迷った後にじいに目を向ける。


「任せてもいいか?」

「はい。もちろんでございます。ワシが管理するバメラルの村にも益があること。むしろ進んで行かせて欲しいくらいです」

「そう言ってくれて助かる。それではその護衛だが……」

「私が行きましょう」


 そう言って進み出てくれたのは、騎士団長だった。


「しかし、お前はまだ休暇中だろう?」

「侯爵様の温情で十分に休むことは出来ました。これ以上休んでいたら、遊びすぎだと父に叱られてしまうでしょう」

「いいのか?」

「はい。それに使者の護衛にそれなりの者をつけておけば、相手を下に見るといったことも思われないでしょう」


 彼女は聡明だと感じる。


 俺が隣の領地と仲良くしたいということを理解してくれて、騎士団長が使者の護衛に付けば、それだけ大事な相手であると相手には理解してもらえる。

 だから、自ら進んでくれたに違いない。


 彼女の忠義には必ず報いなくてはと強く思う。


「分かった。では護衛隊長はお前に任せる。護衛の人選は一任する」

「かしこまりました」

「よし、では話は以上だ。シュウとゴードン、じいは少し話したいことがあるから残ってくれ」

「かしこまりました」


 3人が同時に言い、他の者達は部屋を出て行く。


 俺はゲーム主人公、レックス・ジェクトランと仲良くできることを祈って、訓練に戻った。

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