第27話 イベントとか大してなく……
「ここが今回の武芸大会の会場か」
俺達はハムロ伯爵の街に到着し、宿に荷物や馬を預けたり、そのハムロ伯爵や他の貴族にあいさつをしたりと忙しかった。
そして、あっという間にもう大会だ。
「そうですね。大きさは1000人は収容できるかなり大規模な場所です。戦う場所も30メートル四方はあるみたいですね」
「早速確認しよう」
俺は参加者ということで、シュウ、アーシャ、ルークと護衛を連れていた。
俺達はそのまま参加者として受付をして、会場に入る。
俺達は一応招待客ということで、4人で招待席に行く。
他の護衛達は好きにさせた。
流石にここで襲ってくることはないだろうし、数日間旅の護衛で疲れていると思ったからだ。
「いけー! やれ! そこだ!」
「ぶっころせ! 俺の金がかかってるんだ!」
「やっちまえ! いいぞ! そこだ!」
会場は既にかなりの盛り上がりをみせている。
「まだ試合前だよな? なんでこんなにも盛り上がっているんだ?」
「見てください」
俺はシュウに言われるままに下で戦っている連中を見る。
そこはさっきシュウが言った通りの大きさの地面で、そこでは騎士が10人ずつの赤白に別れて戦っていた。
「時間が来るまでの会場を盛り上げるための戦いですね。それと、騎士団は強いということを民達にみせる必要があるのでしょう」
「なるほどな」
観客席は楕円形をしていて、すでに8割方は埋まっている。
そのほとんどが下中央で戦っている騎士達を見て楽しんでいた。
それから少し待っていると、勝負もついて騎士達が下がっていく。
中央に拡声器の魔道具を持った女性が現れた。
『それでは! 前座は終了となりました! 参加者の皆様はお集まりいただくようにお願いします!』
「では俺は行ってくる」
「はい。お気をつけて」
「応援してる」
「ユマ様に賭けておきますね!」
「全額賭けておくんだぞ」
俺はルークにそう言い残して下に降りていく。
控室に行くとそこには50人以上の人が集まっていて、俺が入ると彼らの視線がじろりと俺にむく。
「ほう……」
中々強そうな奴らだ。
そして、どこかで見たような顔もちらほらある。
あんまり有名武将ではないけれど、ゲームで名前付きだったやつもいた。
そんなやつらと戦えるということを思うと、今日はかなり楽しみな1日になりそうだ。
俺はテンションを1人であげていると、早速名前が呼ばれていく。
「それでは第一試合! ユマ・グレイル選手! バリン選手! 出てきてください!」
俺は呼ばれて行くと、早速先ほどの舞台に立つことになった。
******
「これは……ひどい」
僕はシュウ、トーナメント表を見て、思わずそう呟いてしまう。
「シュウ、どういうこと?」
「教えてくださいませんか?」
隣に座っていたアーシャとルークが聞いてくるので、何が酷いかを説明する。
「今回のトーナメント表。ユマ様を潰す気です」
「!」
「どういうことですかい」
アーシャは目を狩人の物に変えていて、ルークは据わった目になる。
僕はそれを抑えるように手で仕草をした。
「いいですか? ユマ様の相手、ご存じですか?」
「バリン……まさか」
「ええ、彼はこのハムロ伯爵の元で筆頭魔法使いとも言われるような凄腕の方です」
「そんな人が初戦とは……ユマ様もついていない」
「いえ、そのレベルの人が、ユマ様に当たるように仕組まれています」
「なんですって?」
ルークは声が更に低くなり、アーシャは今にも弓を手に取りそうで怖い。
「しかも、ご丁寧にその強豪達は消耗しないように、なるべく弱い人達と当たるように組まれていますね」
「なんと……」
「許せない。運営に直訴してくる」
そう言ってアーシャが席を立ったので、僕はそれを止めた。
「お待ちください。そんなことをしても変わりませんよ」
「でも!」
「直訴した所で厳正な抽選の結果。そう言われたら無理です」
「でも……」
僕達が言い合っているのを見たかったのか、そのハムロ伯爵が僕達の方に近づいてきた。
「シュウ殿、その通りですよ」
「ハムロ伯爵」
「お嬢さん。そんな怖い顔はしないでください。それに、バリンこそいきなりユマ様ほどの勇名をお持ちの方と戦いになるとはついていないのですよ。彼は高齢ですので、負けたとしても仕方ないでしょうがねぇ」
これはつまり、高齢のバリンが負けたらそれはしょうがない。
ユマ様が負けたら年寄りに負けた敗者になるということだろう。
こんなことを企んでいたからユマ様を招待したのか……。
「しかしバリンの結界魔法は一流です。ユマ様もどこまで戦えるのか。殺してはいけないとはいえ、武器は木剣ですからな。バリンの結界魔法を破れるといいのですが……」
「ユマ様なら大丈夫でしょう」
「それは楽しみだ。さ、皆さん、ぜひとも試合が始まりますよ」
ハムロ伯爵の顔はニヤニヤと嫌らしい顔をしていた。
ただ、その顔も……。
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