第17話 アルクスの里

すごく今更かもしれませんが当分は毎日更新します。

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 俺達の周囲には高く太い木々がこれでもかと生い茂っている。

 ルークのような巨体が枝に乗ってもびくともしなさそうだ。


「いやぁ、すごい場所だな」


 俺は今、ナーヴァの案内で弓の指導を受けるためにアルクスの里に来ていた。


 弓の腕を上げるには里に来てもらわなければならない。

 そう言われた俺は2つ返事で来ていた。


 領地のことは、シュウが全てやるので任せてください、と鼻息を荒くして受け持ってくれた。


 なので、護衛として、ルークと少数の護衛を連れてアルクスの里に来たのだ。

 馬を乗り継いで丸2日。

 同じ領内だけれど、意外と遠い場所だ。


 今は木々が生い茂る森の中で、馬車が1台通れるかどうかといった道を通り、里に来ている。


 里は切り開かれた森の中に作られていて、兵士が攻めようとすれば周囲の木々から矢をいかけられるだろう。

 森にさえいれば、とても守りやすいいい場所だ。

 まぁ……その分建物も木で作られているので、火にはとても弱そうだけれど。


「里長! おかえりなさい!」

「ふぉっふぉ、よく帰ってきたの」

「ああ、今もどった。といっても、まだ仕事の途中だ、話は後にしてくれ」


 ナーヴァがそう言って、話しかけてきた女性や老人に言葉を返す。


 2人は視線を俺達に向ける。


「外の方を招いたのですか?」

「なるほどの、後で話でも聞かせてもらおうかのう」

「はい。では皆さん。こちらへ」


 そう言ってナーヴァに宿へ案内をされて、それからすぐに指導……ということになった。


 場所は森の中……だけれど、なぜか木のうろに入れられた。

 なに? ここがお前の墓場だ! 的なことだろうか?


 ちょっと不安になっていると、ナーヴァが軽く謝ってくる。


「申し訳ありません。ですが、やることは簡単です。魔力を引き出して下さい」

「魔力か……俺はただ魔法を使うのでなく、前線で戦いながら魔法を使う予定なんだ。だからゆっくりと魔力を練るようなことをする気にはならないのだが……」

「魔力を早く練るということは我々にも必須のスキルですよ。なので、ユマ様の意にそぐわないことはないかと」

「そうなのか?」

「はい。では……実際にお見せしましょう」

「?」


 俺達は少し場所を離れて、7,8mくらいの広場に出た。

 それから、ナーヴァはなぜかルークとの一騎打ちを望んだ。


「よろしいのですか?」


 ルークとナーヴァの距離は5m。

 彼がハンマーを振り回したらすぐに当たってしまいそうな距離だ。


 ナーヴァは笑顔で答える。


「ええ、問題ありません。では、このコインが地面に落ちた瞬間に開始ということで」

「承知しました」


 キィン、ト。


 コインが地面に落ちた瞬間、ルークがハンマーを振り、それがナーヴァに迫る。

 そして、ナーヴァはあろうことかそのハンマーに向かって矢を放つ。


 ガィィン!!!


「!?」


 ルークは自身のハンマーが弾き飛ばされるとは思っていなかったのか、驚いていてあまり動けていない。


 そして、ナーヴァは俺でも目で追うのがやっとの速度でルークの懐に入り込み、喉元に矢を突きつけた。


「ま、参りました」

「はい。ありがとうございます。お怪我はありませんか?」

「ありません」

「それは良かった」


 ナーヴァは笑顔でルークに握手をして、俺の方に戻ってくる。


「見ていただけましたか?」

「今のは……魔法でも使ったのか?」


 正直、それくらいしか分からない。


「半分正解ですね」

「半分?」

「はい。私は魔力を使いました」

「魔力……」


そんな設定あったか……? と思い返そうとしていると、ナーヴァは隠す気はないらしく、説明してくれた。


「はい。魔力は魔法を使う時に使いますが、それ以外にも使い道があります。肉体に魔力を注ぐ、もしくは、魔力を武器に付与する、です」

「なるほど。では、先ほどハンマーを矢で吹き飛ばしたのも、喉元に一瞬で近づいたのもそれか?」

「その通りです。というか、よく見えましたね。速度には結構な自信があったんですが……」

「たまたまだ」


 俺はそう言って、説明の続きを促す。


「さて、それではユマ様には、この魔力で体を強化する。ということ……は危険なので、武器に付与する。ということを学んでもらおうと思います」

「危険……?」

「はい。この魔力を肉体に注ぎ込むというのは強力な反面、肉体に多大な負荷を与えます。常人であれば、5分で肉体が崩壊します。歴戦の勇士でも、10分持てばいいでしょう」

「なるほど……」


 そういえば、魔法のステータスは高いけど、武力のステータスが低い者が、武力の高い者に一騎打ちで勝つことが結構あった。

 その理由がこれだったのか……たしかに、魔法のステータスは一騎打ちの勝敗に作用する。

 とは書いてあったが……。


 しかし、最強になりたいが、それで死んでしまっては元も子もない。

 使う際は気を付けてつかわなければらないだろう。

 てか崩壊ってどうなるの……こわ。


 だが、今のを見て強力なことは分かった。

 それに、前線で敵と戦いながら魔力を練る、これは必要な技術だ。

 早速習うべきだろう。


「分かった。教えてくれ」

「はい。それで、先ほどの洞に戻ります」

「ああ」


 それから、俺は木の洞に入れられて、座禅を組んでいた。

 近くの洞ではアーシャが入り、ルークも窮屈そうだが入っていた。


「それでは、皆さんにご指導しますね」


 これから魔力操作の訓練が始まる。

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