最終話: 運命の捕獲と無情な記録version
カズオは息子との激しい戦いの末、ついに力尽き、捕らえられてしまった。息子は冷徹なプロフェッショナルとして、カズオを捕虫網に閉じ込め、家へと連れ戻した。カズオは必死に抗おうとしたが、糞転がしの小さな体では、もはや抵抗する力が残っていなかった。
家に到着すると、息子はトイレの蓋を開け、カズオをその上に置いた。カズオは、何が起きようとしているのかをすぐに理解した。しかし、それを阻止する術はなかった。
「これで…終わりか…」
カズオがその結末を受け入れかけたその時、息子がスマートフォンを取り出した。彼は何の感情も見せることなく、カズオを見下ろしながら、スマートフォンのカメラを起動し、動画撮影を開始した。
「記録しておこう。これも仕事の一環だ。」
息子は自らにそう言い聞かせるように呟きながら、カズオを撮影し始めた。捕らえられた小さな虫の姿をクローズアップし、無機質なトーンで語りかけた。
「この害虫を駆除します。これがプロの仕事だ。」
カズオはその光景に愕然とした。自分が駆除される瞬間が、記録として残されようとしていることに、そしてそれが息子の手によって行われることに、絶望感が襲ってきた。
「どうして…こんなことが…」
カズオがもがき続ける中、息子は一瞬の躊躇もなく、トイレのレバーを引いた。カズオは激しい水流に巻き込まれ、暗闇の中へと吸い込まれていった。
その瞬間も、息子のスマートフォンはカズオが流される様子をしっかりと捉えていた。息子はその映像を確認し、何事もなかったかのようにスマートフォンの画面を操作し始めた。
「これで終わりだ。」
息子は撮影した動画を、いくつかの編集を加えた後、何の感情も表さずに動画投稿サイトにアップロードした。タイトルは、「プロの駆除作業:害虫をトイレに流す」という、あまりにも無情なものだった。
息子は動画がアップロードされるのを確認すると、深いため息をつきながらスマートフォンをポケットにしまい、トイレの蓋を閉めた。彼の心の中には、何か重いものが残っていたが、それが何であるのかを理解することはなかった。
アップロードされた動画は、瞬く間に視聴者の間で広まり、「プロフェッショナルな仕事」として称賛のコメントが寄せられた。だが、誰もその背後にある悲劇的な真実に気づくことはなかった。
カズオはその一瞬で、この世界から完全に消え去った。そして彼の最期の姿は、息子によって記録され、世界に公開された。それがカズオにとってどれほど無念なものであったかを知る者は、もう誰もいなかった。
息子はその後も仕事を続け、次の現場へと向かっていったが、彼の心の奥底には、どこか満たされない空虚感が残っていた。それが父親との最後の関係であったことに気づかないまま、彼は日常へと戻っていった。
こうして、カズオの物語は悲痛な形で終焉を迎えた。彼の異世界での冒険や戦いは、誰の記憶にも残らず、無情にもトイレに流されていった。彼の存在は、ただ無名の動画としてネットの海に漂うだけのものとなり、誰もがその真実を知ることはなかった。
転生したら糞転がしだった件 @rubbish0714
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