第6話 ぐうたらJK、おもいで

 ピンポーン……。


里子「ぐう……すう……ん〜………………はっ!

  (ベッドを跳ね起き)コサック!? コサックはどこ!?」


信治「起きて先に探すのがコサックかよ」


里子「信ちゃん! ええっと……おはよう?」


信治「何がおはようだよ。いま何時だと思ってるんだ?」


里子「ん〜……イマナンジ……わわっ!? 7時だ!?

  里子ってば、土曜日なのに早起きしちゃった?」


信治「ばか、夜の7時だっつの。寝ぼけてんじゃねえよ。

  ったく……おかげで買い物に行けなかったじゃないか」


 ――ドサッ。(ビニール袋を床へ置く音)


里子「およ? 行ってくれたの?」


信治「俺もお前に付き合ってたせいで、なんだかめんどくさく

  なったからな。さっき出前を頼んでおいた」


里子「えーまじで! やったー! この袋、ピザ屋さんじゃーん!

  里子も出前で食べるピザ、大好きなんだよねー……あっ、ううん!

  勘違いしないでね信ちゃん。信ちゃんの料理だって、

  もちろん食べてみたかったんだよ?」


信治「はいはい、お世辞はいいから。……また今度な」


里子「また今度はやーだ。明日がいいなー。明日だって、信ちゃん、

  里子と一緒に家で遊んでくれるんだよね?」


信治「遊んで、って……お前、課題を進めるんじゃなかったのか?」


里子「課題はもういーの! それは月曜日が始まったらひとりで

  がんばれるもん。

  それより、休みの日じゃなきゃできないことやらなきゃ

  つまんないじゃん? 家でごろごろーってして、

  動画撮って、おやつ食べて、ゲームして、それからー」


信治「分からんなあ。家でごろごろーこそ、いつでもできること

  なんじゃ……!(息を呑んで)ああ……そうか。

  里子、お前はいつも……」


里子「そーだ! 信ちゃん、里子はまだ、信ちゃんとゲームで

  遊んでないよ。

  信ちゃんの動画チャンネルも観てみたいし」


信治「おっ、俺の動画チャンネルのことはもういいだろ!?

  くそ……てっきり寝ている間に忘れてくれたとばかり……」


里子「えーなんでー? せっかく撮ったんだし、編集して

  動画アップしようよー。明日もお休みなんだからさ。

  信ちゃんとめいっぱい遊び倒して、

  娯楽と堕落の限りを尽くしたいよー。ねー、コサック?」


コサック(里子の裏声)「んこー。シンジと遊びたいー」


信治「はあ。変な芸当身につけやがって……。

  里子なんか、すぐにその変な寝間着に戻っちまったし」


里子「んへへ。変じゃないでしょ? 里子はキツネ見習いなんですー。

  ……おおっ! 焼きたてのピザ、チーズが伸びる伸びる〜。

  はいっ、信ちゃん。あーん?」


信治「なっ!? な、なんだよそれ……」


里子「あーん、だよ。あ、もしかして熱いと食べられない?

  じゃあ里子がフッフーしてあげよっか?

  信ちゃんも昔、里子にしてくれたことだよね?」


信治「そ……そうだっけ?」


里子「うん。今日も信ちゃんにはいっぱい、里子のお世話してもらったから。

  里子も学校のお勉強とか……サークルとか? がんばってる信ちゃんのこと、

  いっぱいお世話してあげるね? だから、今日はずーっと……、

  里子と一緒に、ぐうたら、しよ?」




 そうか……。里子はいつも、学校ではいろいろがんばってるんだな。

 俺が前から見てきた、優等生を普段はやってるんだ。

 それで今は、幼なじみで年上の俺しかいないから、そうやってだらーてして、

 俺に甘えてきて……。




信治「……よし。どのゲームで遊ぼうか?

  ここはひとつ、俺が日頃の動画配信で鍛えてきた

  トレーディングカードゲームの成果でも見せてやろうか」


 ゴトン。(カードの箱を置く音。)


里子「おっ? あはは、めっちゃいっぱいあるー!

  てか、それ超懐かしいカードだね。里子も中学の時は、

  生徒会の子たちに教えてもらいながらみんなで遊んだなー。

  ……へへ。里子、信ちゃんに勝っちゃうかもね」

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