第5話 ぐうたらJK、おつかれ

里子「1枚目、おーぷーん」


 ビリビリ……。(パッケージ開封)


里子「おー? ショートヘアだー。なんか、アイドルってよりも

  アスリート感ある子だねー」


コサック「このフレドルはらいどうレンカちゃん。

  養成所に来る前、中学生の時に陸上でインターハイに出場してる

  ばりばりのスポーツウーマンなんだってさ」


里子「へー、やっぱり運動部かー。アイドルには運動神経も大事だろうねー。

  ……あ、そうだ。ウエハースはどうする? コサックせんせー?」


コサック「んこー、もちろんぼくたちの3時のおやつだよー。

  フレドルちゃんが17人全員揃うまで、食べて食べて、

  いっぱい食べて冬眠に備えるんだよ」


里子「えー? いま夏休みなのに、冬眠なんて気が早いよー。

  でも、そうだね。リコもちょうど腹ペコだったから……、

  いただきまーす」


 パリッ。パリパリ。(ウエハースをかじる)


里子「んー、うましー! バニラ味を感じますなー。

  コサックせんせーも、どうぞお食べー」


コサック「はーい。……んも、んも……うん、ウエハースだね」


里子「あはは、当たり前のコメントだー。

  よーし、この調子でどんどん開けていこっかー」




 ビリ……パリッ。

 ビリ……パリパリ。


里子「ふー、これで21枚目……はにゃ?

  また同じ子が来ちゃった……」


コサック「んこー……もうおなかいっぱいだよ、リコー」


里子「雷同レンカちゃん、これで3回目だねー。

  うーん、コンプまであとちょっとだと思ったんだけどなー。

  残ってるウエハースはー……うえぇっ!? まだこんなに!?」


コサック「おくちパサパサするー、もうおなかいっぱいだよー、

  もう食べられないよー」


里子「んへえー、リコもおなかいっぱいー。もう疲れたー。

  ていうか、センターのリツキちゃん、まだ出てないよね?

  早く出てこーい、信ちゃんの推しー」


 ビリ、ビリッ。


里子「んあぁああ〜っ! またカブっちゃったよ〜!」


コサック「んこー、もうダメだー!」


里子「休憩! ちょっと休憩しよ、コサックせんせー!

  信ちゃんも、一回カメラ止めて? ね、お願い?」




 ボフッ!(里子がベッドに飛び込む音)


里子「ぬあ〜、疲れた〜!」


信治「お前なあ……撮影中に俺の名前を呼ぶなよ。しかも本名で。

  そこのくだりは動画で使えないぞ」


里子「あー、そっか。ごめんごめん。でも……んへへ、信ちゃん。

  昔、一緒にゲーセン行った時のあのフィギュア……、

  あの子がリツキちゃんなんだね」


信治「えっ? ……あ、いや、それは」


里子「ウエハースのパッケージ見て、あれー、なんか見覚えあるなー

  って思ってたんだよー。コサックとおしゃべりしてたら

  思い出しちゃった。信ちゃん、ずっと同じ子を推してるのかー。

  んへへ、一途じゃーん」


信治「う、うるさいなあ。別にいいだろ」


里子「ごめんねー、リツキちゃんのカードなかなか出せなくって。

  ちょっと休んだら再開するよー。だから、それまで……、

 (眠たそうに)ちょっと……待って……ぐー……」


信治「あ、おい里子! ……寝ちまった……よりにもよって人のベッドで……」




 まあいいか。これで少しは満足しただろ。

 にしても里子のやつ、初めての動画撮影のわりに堂々としてたな。

 話し方も、ちょっとぼんやりはしてたけど、昔の優等生だった頃みたいに

 はきはき喋れてたし……。

 やっぱり、普段もあんな感じなのか?




信治「……あっ!? もう夕方じゃねーか……いつのまに……。

  買い物はどーすんだよ……ったく……しょうがないな」

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