第3話 楓との夏祭り
僕は荷物を1回家に置いて、着替えてから楓の家に向かうことにした。
楓はレッスンが終わり次第連絡をくれるみたいだから、それまでのんびりしてよう。
僕は制服から動きやすい服に着替えた。
「これだと部屋着みたい…かな…」
いくら楓だとはいえ、夏祭りに行くんだからもうちょっとおしゃれした方がいいのかなと僕は服を選び直した。
楓はいつも自分に似合った可愛い服を着てくる。どれも素敵でいつも僕はなんだか申し訳ないような気持ちになっていた。
服を一通り出して頭を捻っていたら、楓から電話がかかってきた。
「あ、楓?レッスン終わった?」
すると楓は急にこんなことを言った。
「ねぇかおるん、浴衣持ってない?」
「え、えぇ?ゆ、浴衣??」
僕は流石に持ってないだろと思い、親に聞きに行ってくると言ってスマホを繋いだままその場を後にした。
「母さん、僕の浴衣なんてないよね?」
「え?うーーん…どうだろ、薫のなくてもお父さんのあるかもよ?」
僕は流石に探してもらうのは悪いと思い、母にお礼を言って自分の部屋へ戻った。
「あ、もしもし楓?浴衣無いって〜。え楓浴衣着るの??」
すると楓は少し黙ってから
「着たかったけど…かおるんがないならいいかな!浮いちゃうしね、」
と悲しそうな声で言った。
僕は少し考えて、
「楓、じゃあまた今度みんなが浴衣で来るような大きい夏祭りに行こうよ。その時までに僕の浴衣も用意しとくから。」
と言った。すると、楓は明るい声で元気よく
「うん!」
と返事をした。
結局僕はいつもみたいな服装になってしまった。まー楓だしいいやなんて思いながら楓の家に行くと、楓は真っ白なワンピースにポニーテール姿で出迎えてくれた。
すっごい似合っていた。
「楓その服凄いいいじゃん」
僕がそう言うと隣を歩いていた楓が少し恥ずかしそうな顔をしてえへへと笑った。
「これ、可愛いでしょ!白いワンピースずっと欲しかったんだ」
楓はそう言いながらスカートとポニーテールを揺らしながら僕に笑いかける。
ずっとこの関係が続いたらいいな、と僕はこの幸せな空間を噛み締めていた。
実は僕は一度楓に告白をしたことがある。だがそれが中学3年生の受験期だったから、受験に集中したいという理由で断られてしまった。
きっと楓の事だからホルンのことも考えないといけなかったのだろう。
告白は成功しなくてもこうやって2人で過ごせる時間があるなら僕はそれでも良かった。
楓はどう思っているのか分からないけど、それを知りたいとは思わなかった。
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