閑話休題
一日目が終わった。
事件は起きなかったが異様な風習と儀式が行われた。まだ、問題となるような場面は訪れていないが、いかにも事件が起きそうな雰囲気だった。
これが現実にあったことなのだろうか。
一年前に起きた山火事のあった場所で発見された五人の死体と一つの建物とつながる。
久乃が手をゆっくりと挙げた。
「何か質問がある場合は話の途中で質問してもいいのか?」
「ええ、勿論よろしいですよ」
高野は頷いた。
「アドバイスだが質問は無理にしない方がいい」
遮ったのは七海だった。
「どうして?」
「このゲームは事件を解決することよりも相手に嘘の推理を飲ませる勝負なんだ。質問なんてすれば、私は相手にここの部分を考えていることを示す。良いことなんて何一つないんだ」
「ゲームの勝敗だけならそうかもしれないが、流石に依頼人に何も分かりませんと言って帰させるわけにもいかないだろう」
久乃と七海はゲームのプレイヤーで観客はこのゲームを楽しんでいるけれど、唯一白野早希という依頼人だけはこの事件の真相を知りたいと思ってきている。
七海は口元に手を当てて笑った。
「何がおかしい?」
「想像していたよりも優しいんだね。別に彼女が本当にこの物語の早希であるとは限らないのにね」
七海は久乃に言う。
「そうであるとは限らないということはそうでないと決まったわけじゃない」
「じゃあ好きにするといい。情報は公平に公開されるからね。私の推理にも役に立つかもしれない」
七海は手を出して久乃に質問を促した。
「それじゃあ、手短に質問をさせてもらう。別にヒントでもなんでもない。この出来事は本当にあった出来事なのか?」
早希は頷きかけた瞬間に高野が割って入る。
「本当にこの出来事があったのか。それについて分かったとして何の意味があるのでしょうか。もし、仮に彼女がはいそうですと言ってもそれが本当であることは確かめられません。本質的に意味のないことです」
「司会には質問していないんだけど」
「それは分かっています。ただ、あくまでもこれはゲームですから。例えばあなたは推理小説の内容が本当かどうか気に留めるでしょうか。ただ論理が破綻していないこと、単純に面白いことそれだけが重要でしょう。今語られている内容が全てであり、それ以外の情報は全く必要ありません」
高野は言う。
「よくわかった」
久乃は頷いた。
今は単純な犯人当てとして集中することにした。この物語が現実であろうがなかろうが、久乃に解かないという選択肢は存在しない。
「それじゃあ、続きをお願いします」
久乃はそれだけ言って再び語られる物語に意識を集中させた。
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