第24話: 不良の接触
シノンは昨日の出来事を思い出しながら学校へ向かっていた。くるみを守るため、白装束の人物の謎を解明する必要があると感じていた。彼女に近づく危険な影に対して、心の準備を固める一方で、自分の周囲にも徐々に変化が起こりつつあることを感じていた。
教室に到着すると、すぐにざわついた空気を感じ取った。廊下では生徒たちが興奮した様子で話し合っている。
「草野よもぎがまた問題を起こしたらしいよ!」「今度は他校の生徒と喧嘩して、かなり揉めてるみたいだって…」
シノンはその話に耳を傾けながら、自分には直接関係ないと思っていた。しかし、昼休みになると、友人の高梨とおりが普段とは違う表情で教室に戻ってきた。
「シノン、ちょっと話せるか?」とおりは真剣な顔でシノンに声をかけた。
「どうした?何かあったのか?」シノンは少し不安を感じながらも、落ち着いて尋ねた。
二人は人気の少ない場所に移動すると、とおりが急に口を開いた。「さっき、草野よもぎが俺に話しかけてきたんだ。あいつ、最近何かおかしいぞ。やたらと俺に『お前も巻き込まれてる』って言ってきてさ。」
「巻き込まれてるって…何の話だ?」シノンは警戒心を強めながら尋ねた。
「そいつ、何か『運命』とか『逃げられない』とか言ってた。正直、意味が分からなかったけど、どうも俺が関わってるらしいって話してきたんだよ。」とおりは頭を掻きながら、困惑した表情を見せた。
シノンは一瞬、息を飲んだ。「運命…」その言葉は、白装束の人物がくるみやシノンの運命に干渉していることを示唆していた。そして、今やとおりまで巻き込まれつつあるのかもしれない。
「よもぎが言ってたのか?何か、白装束とかそういう話は出なかったのか?」シノンは慎重に尋ねた。
「いや、そこまでは言わなかった。ただ、『お前ももうすぐ気づくことになる』とか言ってきてさ。まるで俺が何かに巻き込まれてるかのように。」とおりは疑念の表情を浮かべていた。
シノンはさらに考えを巡らせた。白装束の人物や「運命」の言葉が繰り返されることから、何かが迫っているのは間違いない。しかし、とおりまで巻き込むわけにはいかない。
「気をつけたほうがいいな。よもぎが何か企んでるのか、それとも誰かに操られてるのか分からないけど、これ以上深入りしないほうがいい。」シノンはとおりに忠告した。
「そうだな…でも、俺が巻き込まれる理由なんて思いつかないんだよ。お前やくるみが何か知ってるのか?」とおりはシノンに鋭く問いかけた。
シノンは一瞬言葉に詰まったが、すぐに冷静を保ち、「いや、俺もよく分かってない。ただ、白装束の噂が広まってるから、俺たちも少し気にしてるだけだ。」と答えた。
とおりはそれを聞いて少し納得した様子だったが、まだ完全には疑念が晴れていないようだった。「分かった。でも、何かあったらすぐに教えてくれよ。お前が何か一人で抱え込んでる気がするんだ。」
シノンは軽く頷き、「もちろんだよ。ありがとうな。」と返事をしたが、心の中では、とおりをこれ以上巻き込まないために、どう動くべきか考えを巡らせていた。
その日の放課後、シノンは再びくるみの家を訪れることにした。とおりに起こった出来事をくるみに伝え、二人で今後の対策を考えなければならないと感じていた。
くるみの家に到着すると、彼女はシノンを迎え入れたが、その顔には少し疲れた表情が見えた。
「シノン、今日はどうしたの?」くるみは心配そうに尋ねた。
シノンはため息をつきながら話し始めた。「実は、草野よもぎがとおりに話しかけてきたんだ。しかも、『運命』とか『逃げられない』とか言ってたらしい。とおりも巻き込まれ始めてるのかもしれない。」
くるみは驚きの表情を浮かべ、シノンの言葉を飲み込んだ。「とおりが…運命に?そんな、どうして彼まで巻き込まれるの…」
「俺にもまだ分からない。ただ、白装束の人物や運命に関する話がこれほど広がっている以上、俺たちだけじゃなくて、周囲の人たちも危険にさらされているのかもしれない。」シノンはくるみに真剣な顔で伝えた。
くるみはしばらく考え込んでから、ゆっくりと口を開いた。「シノン、もしこの運命に私たちが巻き込まれているだけじゃなく、他の人たちも関わっているなら、私たちは早くこの謎を解き明かさなきゃならないわ。」
「その通りだ。でも、とおりをこれ以上巻き込みたくない。彼には守らなきゃならない存在だってことを忘れてはいけない。」シノンはそう言って、くるみの手を握りしめた。
くるみは少し微笑んで、「ありがとう、シノン。あなたがいてくれて、本当に心強いわ。」と応じた。
二人は謎に包まれた「運命」の行方を解き明かすため、さらなる決意を固めた。誰が敵で、誰が味方かもまだ分からない状況で、シノンはくるみを守りながら、この危険な運命に立ち向かう覚悟を再確認した。
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