第22話: 隠された真実と迫る問い

シノンはくるみの家を後にし、学校へ向かう途中も頭の中は銀色のペンダントのことと、くるみの話した「運命を操る存在」のことでいっぱいだった。くるみを守るためには、この謎を解き明かさなければならない。しかし、親友の高梨とおりや他の人たちには、まだこのことを話すべきではないと感じていた。


学校に着くと、すぐにとおりがシノンを見つけ、駆け寄ってきた。


「おい、シノン。昨日のこと、どうだった?あの白装束の奴、結局何も分からなかったのか?」とおりは軽い口調だが、どこか真剣な表情をしていた。


シノンは一瞬ためらい、ペンダントやくるみのことをどう説明するべきか迷った。だが、すぐに話を曖昧にしようと決めた。「いや、追いかけたけど、見失っちゃった。次こそは捕まえたいところだ。」


とおりはシノンの言葉に納得するように頷きながらも、突然何かを思い出したように眉をひそめた。「そうだ。昨日さ、俺が不審者に会ったって言ったろ?シノン、くるみがどうとか言ってたよな。お前、昨日緊迫してたからそのまま流したけど…何か隠してるのか?」


その問いに、シノンの胸は一瞬でざわついた。とおりの目は鋭く、自分が何かを隠していることを察しているのは明らかだった。しかし、くるみが別世界から来たことや、ペンダントの話を今は明かすべきではない。シノンは冷静を装いながら答えた。


「いや、隠してるわけじゃないんだけどさ…くるみが少し具合が悪いから気になってたんだ。昨日の話も、そのことを考えてただけだよ。」シノンはできるだけ自然に言葉を選んだ。


とおりは少し不安げな表情でシノンを見つめたが、しばらくしてため息をついた。「そっか…なら、くるみが元気になるといいな。でも、もし何かあったら俺にも相談しろよ。お前が何か一人で抱え込んでるように見えるからさ。」


シノンはその言葉に少し胸が締め付けられる思いがしたが、とおりの気遣いに感謝し、微笑んだ。「ありがとう、とおり。お前には迷惑かけたくないけど、もし本当に何かあったら頼るよ。」


とおりは笑ってシノンの背中を軽く叩いた。「それでいいんだよ。まあ、俺も気になることがあったらすぐ言うからな。」


その瞬間、宮乃ころねが静かに近づいてきた。彼女はおとなしくて優しいが、時折鋭い洞察力を見せる存在だ。


「シノンくん、高梨くん…少し話したいことがあるの。」ころねは控えめな声で二人に呼びかけた。


シノンととおりは顔を見合わせ、ころねに向かって歩み寄った。「話って、何かあったのか?」シノンは尋ねた。


ころねは少し緊張した様子で頷き、「昨日、不思議な夢を見たの。夢の中で白装束の人が出てきたの。それに、くるみの名前も出てきた気がするの…」


その言葉を聞いたシノンの胸が一瞬で高鳴った。くるみの名前が出てくる夢――それが偶然とは思えない。だが、くるみの秘密をまだ明かすわけにはいかないと、シノンは冷静を装った。


「くるみの名前…それはただの夢だろう。何か現実と関係があるとは限らないよ。」シノンは慎重に言葉を選んで答えた。


ころねは少し不安げな表情を浮かべたが、静かに続けた。「でも、その夢の中で『くるみが鍵を握っている』っていう言葉が聞こえた気がするの。それがどういう意味なのか分からないけど、なんだか不安で…」


「鍵を握ってる?」とおりは少し驚いた表情を見せた。「それってただの偶然なのか?それとも、なんか意味があるのか?」


シノンは冷静を装いながらも、内心ではこの夢がただの偶然ではないことを確信していた。くるみが何か重要な役割を持っていることは間違いないが、そのことを周囲に知られるわけにはいかない。


「偶然かもしれないけど、もし何かあれば気をつけるようにするよ。」シノンはそう言って、これ以上話を深堀りしないように話を切り上げた。


「そうだな…何かあったら俺たちで対処すればいい。」とおりも同意して頷いた。


放課後、シノンは再びくるみの家へ向かった。ペンダントのことをもっと詳しく聞き出し、くるみがこの運命の中でどんな役割を担っているのかを明らかにしなければならなかった。


くるみの家に到着すると、彼女は出迎えたが、その顔にはまだ不安の影が漂っていた。


「シノン、また来てくれてありがとう。何か進展があった?」くるみは心配そうに尋ねた。


シノンはペンダントを見せながら、昨日の続きを話した。「このペンダント、君が言ってた“運命を操る存在”に関係してるんだろ?くるみ、もっと詳しく話せることがあれば教えてほしい。」


くるみはペンダントをじっと見つめ、再び深い息をついた。「この紋様は、私の元の世界で“運命の支配者”の印だった。運命を持つ者たちを管理し、時には運命を変える力を持っていたの。このペンダントを持つ人物が、もしかしたら私をここに導いたのかもしれない…」


「導いた?」シノンはその言葉に反応した。「つまり、君はわざとこの世界に来させられたってことか?」


くるみは困惑した表情で首を振り、「それは分からない。でも、私が何かの“鍵”だって言われてるなら、たしかに運命が絡んでいるのかもしれない。何かを開く存在なのか、何かの始まりを示す存在なのか…」


シノンはその言葉に深く考え込んだ。「何にせよ、君がその運命を解明するために俺も力を尽くすよ。白装束の人物が何をしようとしているのか、必ず突き止める。」


くるみはシノンに感謝の微笑みを見せながら、「ありがとう、シノン。あなたがいてくれて本当に助かる。私もできる限り協力するわ。」と答えた。


二人は手を取り合い、謎に満ちた運命の行方を解き明かすためにさらなる一歩を踏み出した。

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