第21話: 手がかりのペンダント
シノンはポケットにしまった銀色のペンダントを手の中で握りしめながら、家路を急いだ。公園で目撃した白装束の人物を追いかけたものの、再び姿を消されてしまったが、このペンダントが彼を白装束の謎へと導いてくれるかもしれないと感じていた。
家に着くと、シノンは机の上にペンダントを置き、改めてその模様をじっくりと観察した。見たことのない奇妙な紋様が刻まれているが、それが何を意味するのかは全く分からなかった。
「これは一体…」シノンは呟きながら、思い出したようにスマートフォンを手に取った。とおりにペンダントのことを伝え、彼にも協力を仰ぐべきかどうか考えたが、まずはくるみに連絡を取ることにした。
彼女にこのペンダントを見せるべきか、それともまだ黙っているべきか。シノンの心は揺れたが、最終的にくるみにすぐに相談することを決意した。
「くるみ、大丈夫か?今から会えないか?話したいことがあるんだ。」シノンはメッセージを送信し、返事を待った。
数分後、くるみから返信が来た。「シノン、少し体がだるいけど、家にいるよ。来てくれる?」
彼女の体調が気になるが、シノンはペンダントを手に取り、再びくるみの家へ向かった。
くるみの家に着いたシノンは、少し緊張しながらドアをノックした。しばらくして、くるみが出てきた。彼女は相変わらず少し疲れた様子だったが、シノンに向かってかすかに微笑んだ。
「ありがとう、シノン。わざわざ来てくれて…話したいことって何?」くるみは少し不安げに尋ねた。
シノンは彼女の表情を見て、ゆっくりとペンダントを差し出した。「これなんだけど…昨夜、公園で白装束の人物を追いかけたときに見つけたんだ。これが何か分かるか?」
くるみはそのペンダントを見つめた瞬間、目を見開いた。顔から血の気が引いていくのがシノンにも分かるほどだった。彼女の手が震え、ペンダントに触れることすらためらっているようだった。
「このペンダント…」くるみはかすれた声で言葉を絞り出した。「私が…覚えてる限りだと、これ…私がいた世界の象徴に似てる…」
「似てるってどういうこと?」シノンはさらに問い詰めた。
くるみは深い息をつき、言葉を選びながら説明し始めた。「私が元々いた世界には、いくつかの“印”があって、それは私たちが属する運命を示すものだった。このペンダントに刻まれている紋様…それは私の世界で“運命を操る存在”の印によく似てるの。」
シノンはくるみの説明を聞いて、彼女が抱えている運命がますます重く、複雑なものであることを理解した。彼女が語る「運命を操る存在」とは何なのか、そしてその存在が今、この世界に関与しているのかもしれないという恐れがシノンの中で膨らんでいった。
「つまり、このペンダントの持ち主が、君の運命に何か関わっている可能性が高いってことか?」シノンは真剣な表情で尋ねた。
くるみは小さく頷き、「多分…そうだと思う。でも、何故今になってその存在が現れたのか分からない。事故でこの世界に来たときは何も感じなかったのに、急に現れたのはどうして?」と、困惑した様子で答えた。
「それを知るためには、俺たちがその白装束の人物を突き止める必要があるんだろうな…」シノンは考え込んだ。「もしその人物が、君の運命を操ろうとしているなら、俺が何としても阻止する。」
くるみはシノンの決意に感謝し、彼に微笑みを返した。「ありがとう、シノン。あなたがいてくれるだけで、私は安心できる…」
シノンはくるみの手を握り返し、「君を絶対に守るから。」と力強く答えた。
その夜、シノンはくるみを安心させるためにしばらく一緒に過ごしたが、頭の中では次の手を考え続けていた。ペンダントが示す「運命を操る存在」とは何者なのか、そしてくるみの運命をどう変えようとしているのか――。
彼は次に白装束の人物を追い詰める方法を模索しながら、さらなる行動を起こす決意を固めていた。
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