第20話: 見えざる敵の居場所

シノンは眠れぬ夜を過ごした後、くるみの家を後にした。心の中には白装束の人物のことが引っかかっていた。白装束は何を企んでいるのか、そして彼女にどんな影響を与えるのか、それを解明しなければならないと強く感じていた。


学校に着いたシノンは、クラスメートたちと普段通りの会話を交わしていたが、頭の中は白装束の人物のことでいっぱいだった。そんな中、親友の高梨とおりが、近づいてきた。


「実はさ、昨日の夜、変な奴を見かけたんだよ。白い服を着た、顔が全然見えない奴をさ。不審者かな?」


シノンはその言葉に一瞬固まった。白い服を着た人物――それはまさに、昨夜くるみの家で見た白装束の人物のことだ。


「それって…どこで見たんだ?」シノンは急いで尋ねた。


とおりはシノンの焦る様子に気づきつつ、慎重に答えた。「昨日の夜、家に帰る途中でさ。町外れの公園の近くで見かけたんだ。顔はフードで隠れてて、性別もわからない感じだった。でも、何か不気味な雰囲気が漂ってたんだよ。」


シノンは心の中で焦りがさらに募った。昨夜、白装束の人物がくるみの家に現れたのと同じ時間帯、とおりが街の外れでその人物を目撃していたのだ。


「その後、その人物はどうしたんだ?」シノンはさらに問い詰めた。


「そいつ、俺に気づいたみたいで、ちょっと立ち止まったんだけど、すぐに公園の方に歩いて行ったんだ。あの時は深追いするのも怖かったから、俺はそのまま帰ったけど…なんか嫌な感じがしたんだよな。」とおりは少し戸惑いながらも正直に話した。


シノンはその話を聞いて、決心を固めた。「ありがとう、とおり。これで決心がついたよ」


とおりはシノンの決意を感じ取り、彼の肩に手を置いて真剣な表情で言った。


「よくわかんないけど、気をつけろよ。何かあったらすぐに知らせてくれ。俺も駆けつけるからさ。」


シノンはその言葉に感謝し、軽く頷いた。「ありがとう、とおり。俺一人で行くけど、何かあったらすぐに連絡する。」


その後、シノンは授業が終わるのを待って、公園へ向かうことを決意した。白装束の人物の正体を突き止め、くるみを守るための手がかりを得るためには、この機会を逃すわけにはいかなかった。


放課後、シノンは学校を飛び出し、とおりが言っていた街外れの公園へ向かった。日が沈み始め、周囲は薄暗くなり始めていた。公園に近づくにつれ、冷たい風が彼の肌に触れ、不安がじわじわと広がっていく。


「ここがその場所か…」シノンは公園の入り口で立ち止まり、周囲を見渡した。公園自体は古びていて、あまり手入れがされていない様子だった。遊具はさびつき、草が生い茂っている。人影はほとんどなく、夜の闇が次第に深くなっていく。


シノンは緊張しながら、公園の奥へと足を進めた。白装束の人物が現れる可能性がある場所を探しながら、慎重に周囲を観察していった。風の音が耳に届くたびに、彼の心臓は少しずつ早く脈打ち始める。


公園の中央に差し掛かったとき、シノンは何かが動いた気配を感じた。とっさに振り向くと、薄暗い木々の間に白い影が見えた。フードを深くかぶり、全身を白装束で包んだ人物だ。間違いなく、昨夜くるみの家で見たその姿だった。


「お前…!」シノンは声を張り上げ、その人物に向かって走り出した。


だが、白装束の人物は無言のまま、静かにシノンから離れていく。その動きは、まるで風に乗っているかのように軽やかで、シノンが追いかけようとするたびに、距離を保っているようだった。


「待て!くるみに何をしたんだ!?お前は何者なんだ!?」シノンは必死に問いかけたが、白装束の人物は答えずに森の奥へと消えていく。


シノンは追いかけようとしたが、次第にその姿が見えなくなり、やがて闇の中へと完全に姿を消してしまった。


「くそ…逃げられたか…」シノンは立ち止まり、肩で息をしながら辺りを見回した。白装束の人物の姿はどこにもない。彼は逃げられたことに苛立ちを感じながらも、その場に座り込んで冷静になろうとした。


「今のは確かにあの白装束の人物だった。でも、あいつは何を狙っているんだ…?」シノンは考え込んだ。目撃した事実をとおりやくるみに伝えるべきだと感じたが、それでもなお、このままでは終わらせられないという気持ちが強かった。


シノンは再び立ち上がり、公園の周囲を調べ始めた。白装束の人物が現れた場所に何か手がかりが残されているかもしれないと考えたからだ。だが、探しても特に目立つものは見つからなかった。


「今は、これ以上無理か…」シノンは諦めかけたが、ふと地面に目を向けたとき、何かが光っているのを見つけた。


それは小さな銀色のペンダントだった。古びたデザインだが、どこか異様なオーラを放っている。シノンはそのペンダントを手に取り、じっくりと観察した。何かの象徴が刻まれているが、見たことがない模様だった。


「これが手がかりになるかもしれない…」シノンはペンダントをポケットにしまい、再び公園を後にした。白装束の人物を追い詰めるため、このペンダントが重要な手がかりになると信じていた。


家路に着く途中、シノンは再び決意を新たにした。くるみを守るため、この謎を解き明かさなければならない。そして、彼女を苦しみから解放するために、どんな困難が待ち受けていようとも、立ち向かう覚悟ができていた。


夜の静けさの中、シノンは心に燃える決意を抱きしめながら、歩みを進めていった。

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