第19話: 闇を切り裂く決意
シノンはくるみをしっかりと抱きしめたまま、心の中で彼女の無事を祈っていた。彼女の体は冷たく、弱々しい脈が彼の指先に感じられる。白装束の人物が何をしたのか、そしてくるみの身に何が起きたのか、シノンの頭の中で数多くの疑問が渦巻いていた。
「くるみ…しっかりしてくれ。俺がここにいるから…」シノンは優しく彼女の名前を呼び続けた。
その時、彼女の手が微かに動き、かすかな声がシノンの耳に届いた。「シノン…私…大丈夫…でも…あの人が言ってたこと…」
シノンはくるみの言葉を聞き逃さずに、顔を彼女に近づけた。「あの人って…白装束の奴か?何か言われたのか?」
くるみはゆっくりと頷き、苦しそうに言葉を続けた。「あの人…私に…選ばれた運命があるって…でも、シノンには…関係ないって…言われたの…」
その言葉に、シノンは胸が締め付けられる思いだった。くるみが抱える運命、それが彼女をどこかへ連れて行こうとしている――そんな恐怖が頭をよぎった。
「そんなことはない。俺には関係ないなんて言わせない。くるみ、俺は君を絶対に守るよ。」シノンは力強く言葉を放ち、彼女の手をしっかりと握りしめた。
くるみはシノンの言葉に微かに微笑んだが、その目にはまだ不安の影が見えていた。「ありがとう、シノン…でも、私…この世界にいるのが…辛いのかもしれない…」
その言葉にシノンは驚きと同時に、彼女の心の奥底にある苦しみに気づいた。この世界での存在が、くるみにとって重荷になっているのだろうか。彼女が別世界から来たという事実、それが彼女を縛り付け、苦しめているのかもしれない。
「くるみ、君がどこから来たとしても、ここにいることには意味がある。俺はそう信じてる。だから、君が辛い思いをする理由なんてないんだ。」シノンは真剣な眼差しで彼女を見つめ、言葉に力を込めた。
くるみはその言葉を受け入れるように目を閉じ、少しだけ深呼吸をした。「シノン…ありがとう…私、もう少しだけ…頑張ってみる…」
シノンは彼女の決意を感じ取り、彼女をそっと抱きしめた。「そうだ、俺たちで一緒に乗り越えよう。君が選ばれた運命なんて、俺たちの手で変えてやるんだ。」
その夜、シノンはくるみの家で彼女を看病しながら、彼女のそばを離れなかった。白装束の人物が再び現れるかもしれないという恐怖が頭をよぎったが、それでもシノンは彼女を守ることを誓っていた。
夜が深まるにつれ、くるみはようやく少し落ち着きを取り戻し、シノンの腕の中で眠りについた。シノンは彼女の寝顔を見つめながら、今後のことを考え続けた。
次の日の朝、シノンはくるみが少し回復していることに安堵した。彼女はまだ完全に元気を取り戻したわけではないが、少なくとも意識ははっきりしていた。
「シノン、昨日はありがとう…あなたのおかげで、少し落ち着けたわ。」くるみは微笑みながら、シノンに感謝の気持ちを伝えた。
「俺の方こそ、何もできなくてごめん。でも、これからはもっと力になるから。」シノンは決意を込めて答えた。
その時、シノンはふと何かを思い出した。白装束の人物が言っていた「選ばれた運命」――それが何を意味するのか、調べる必要があると感じた。くるみの運命を変えるために、彼は行動を起こすことを決意した。
「くるみ、今日は学校を休んで、少し休養を取った方がいい。俺は調べることがあるから、また後で戻ってくるよ。」シノンはくるみにそう告げ、彼女の様子を確認した後、家を出た。
シノンは、白装束の人物が現れる前に解決策を見つけるため、すぐに行動を開始することにした。彼女を守るために、そして彼女の運命を変えるために、シノンは決して諦めないと心に誓った。
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