第3話: 突然の闇

夏休みが終わったにも関わらず、外は暑かった。シノンとくるみは学校生活に戻り、再び日常の忙しさに追われるようになっていた。とはいえ、二人の間には以前とは異なる微妙な距離感があり、特にシノンは、くるみに対する特別な感情を意識せずにはいられなかった。


ある放課後、シノンは陸上部の練習を終え、校門を出たところで、ふとくるみがいないことに気づいた。いつもなら一緒に帰るはずのくるみが見当たらず、シノンは少し不安を感じた。


その時、遠くから救急車のサイレンが聞こえてきた。シノンの胸がざわつく。校門の先に見える大通りの方で、何かが起こっているのだろうか。まさか、という不安が頭をよぎる。


「田村くるみが…事故に遭ったらしい…!」


その言葉がシノンの耳に飛び込んできたのは、まさにその瞬間だった。目の前が真っ白になる。彼は、そのまま駆け出した。足がもつれそうになりながらも、シノンは必死で事故現場に向かった。


現場にたどり着くと、そこには救急隊員たちが慌ただしく動いていた。シノンの視線が捉えたのは、血の気の引いたくるみの姿だった。倒れた彼女の周りに集まる人々、パトカーの青いランプが閃く。


「くるみ!」シノンは叫んだが、救急隊員たちが彼女をすぐにストレッチャーに乗せ、救急車へと運んでいく。


シノンは必死に救急車に駆け寄ろうとしたが、周りの人々に止められた。「彼女は病院に運ばれる!今は我慢して、後で来なさい!」


その言葉を聞いても、シノンは動揺が収まらなかった。彼の心は完全に乱れ、何が現実で何が夢か分からなくなるような感覚に陥った。


くるみは今、命を懸けた戦いをしている。彼女の命がどうなるのか、シノンは何もできないまま、ただその場で立ち尽くすしかなかった。


夕暮れの光が沈む中、冷たい風が彼の頬を撫でた。その風は、まるで何か大切なものが彼から遠ざかっていくかのように、痛々しいものだった。



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