第2話: 波間に揺れる心
夏休みの終わりが近づいてきた。シノンとくるみは、相変わらず海辺の町で過ごしていたが、二人の間には何とも言えない微妙な空気が漂っていた。
ある夕方、二人は砂浜を歩いていた。沈みゆく夕日が海を橙色に染め、波の音が心地よく響いていた。
「シノン、この夏休み、あっという間だったね。」くるみがつぶやいた。
「そうだな。もうすぐ学校が始まるなんて信じられないよ。」シノンも答えた。
お互いにいつも通りの会話をしているようで、心の中では別のことを考えていた。シノンは、くるみに対する自分の気持ちが友情以上のものであることに気づいていたが、それをどう伝えていいのかわからなかった。くるみもまた、シノンに対して特別な感情を抱いていたが、それを口にする勇気はなかった。
「ねえ、シノン。」くるみが足を止め、シノンを見つめた。
「何?」シノンも足を止め、くるみの顔を見た。
…もし、この夏が終わっても、私たちずっとこうしていられるかな?」くるみの声には、不安と期待が入り混じっていた。
「もちろんさ。これからも、ずっと一緒だよ。」シノンは笑顔で答えたが、その言葉の裏には、自分の本当の気持ちを隠していた。
二人はそのまま、また静かに歩き出した。告白することなく、お互いに何かを抱えたまま、それでも今の関係を壊すことなく過ごしていくことを選んだ。
波打ち際で寄せては返す波のように、二人の心も揺れ動いていたが、それでもこの夏の思い出は二人の心に深く刻まれていた。
夕日が完全に沈み、海辺に静かな夜が訪れた。シノンとくるみは、互いに言葉を交わさずとも、その場の空気が全てを語っているように感じていた。
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