第三話 吸血衝動
孤児への紛れ込み計画前夜、押入れで眠りにつく朱は体の中でグツグツと煮えたぎるような
ハァ、ハァ...体があつい、あつい....
朱は悪感情の代わりに朔耶の血を数滴提供してもらっている。
しかし、朱は朔耶による治療時にすでに彼の体に対し中毒となっており、彼に嫌われたくない一心で日中は見栄をはり平然を装っていたが圧倒的に量が足りていない、 そのため毎晩彼女はどうしようもない
久月家において一族の血肉を与えたもしくは食べた魔物を生かしておくのは初代の頃より硬く禁じられている。生き長らえた前例がないためわかっているのは一定量魔物が取り込むと位階が上がるということと魔物をおびき寄せる強力な誘引剤となることぐらい。誰も中毒性が含まれていることを知る余地はなかった、加えて特別久月の血が濃い朔耶の血には数滴で虜になる強力な中毒性がある。
「ハァ、ハァッ、ダメだ我慢できない...」
朱は血走る目つきでたどたどしく押入れから出た、そして血を求める衝動が体を突き動かす。
「ちょっとだけ、ちょっとだけだから」
朱はスースーと静かに寝ている朔耶のそばへと忍び寄り....
ハァ、いただきます。
迷いなくその熱い血潮を感じる首筋に牙をたててかみついた。
おいしい、おいしい!
朱は一心不乱に血を吸い続ける、通常の人間では1リットル以上の出血で命の危険がある、もちろん朔耶はまだ10歳で体が小さく限界は1リットルを下回る。朔耶は痛みを感じて起きることもできず出血のショックで意識を失い、その顔は青ざめていく。
しかし、朱は吸血し続ける。数分間吸い続けやっと満足したのか首から口を離し蕩けた顔で余韻に浸り始める。そして正気に戻り朔耶の様子を確認する。
「いけない!吸い過ぎた!朔耶ごめん、大丈夫!」
体を必死にゆすっても青ざめた朔耶は眼を覚まさない、その体は冷たくなっていく。
あぁ!ダメだ!このままじゃ朔耶が死んじゃう!どうしよう...どうしよう!
朱はどうすることもできず涙目になりながら朔耶の体をゆすり続けるしかなかった。しかし朔耶は冷たくなっていく一方、そして呼吸が止まった時頭が真っ白になって行きゆする手をとめその場で自分の行いに後悔するしかなかった。
「ああぁぁ、私はなんてことを....」
朔耶の顔に触れ彼女は泣きつくす
しかしその瞬間朔耶の体質が発動する。
久月家の特異体質は体を無理やり健康な状態に保とうとするもはや呪いと言い換えたほうがしっくりするものでその体質は主とする体が死に瀕する時、再生力を爆発的に向上させる過剰反応を示す。
「へ?」
朱は困惑した。いきなり先ほどまで気持ち良さすら感じる朔耶のひんやりとした体温が元に戻りはじめ、呼吸をし始めたのだそれだけではなく、切り傷、打撲、治りきってない生傷が急速に治り始めているのだ。
「あ、あれ?確かにさっきまで死にかけてたのに..しかも傷がなくなってる」
朱は目の前で起こったことが理解できず先ほどまでの後悔も吹っ飛び呆然とするしかなかった。
そして...
「ま、まぁいっか!寝よ」
そして朱は理解できない現象を考えるのをあきらめた....
朱は何事もなかったようにそそくさと押入れにもどり眠りにつくのであった。
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