第二話

 孤児の受け入れについての話を聞き僕はあることを思いついた。

 孤児の受け入れに乗じて朱を孤児として紛れ込ませれば朱を自然に久月家で匿うことができるんじゃないか?

 孤児は久月家や他の勢力の領土外の村落からも受け入れられることがあるため身元などの背景の情報はどうにでもなる。朱の変化も完璧だ、よほどのことがない限り見破られることはないだろう。

 しかし、変化に時間制限などはないのだろうか?直接聞いてみるしかないか。

 そう考え朱が潜む押入れへと目線を移すと襖の隙間からこちらを覗く金に輝く目と合う。


 「朱、少し相談があるんだ出てきてくれ」

 

 呼びかけると朱はおずおずと押し入れから出てくる。

 

 「どうしたんだ?そんなかしこまって?」


「さっきの女の人の話しを聞いてた、国とかよくわかんないけど朔耶がとてもえらい立場っていうことはわかったから..その...今までの態度は失礼だった?」


 「そんなこと気にしたのか、僕は全然気にしてないよ、僕の理想は人間と魔物は対等な関係なんだむしろもっと馴れ馴れしくてもいいぐらいだ」


 そう言うと朱は僕にいきなり抱き着いてきた。

 距離を詰めるのはやすぎないか?しかもにおいをすごい嗅いでるし


「朱これじゃあ話ができないよ、はなれて」


 それを聞くと朱はしぶしぶ離れて僕の前に正座した


「で、相談ってなに?」


「ああ、朱を近々受け入れる孤児の中に紛れ込ませようと考えているんだ、そうした方がバレたらまずい今よりはましだからね。それで質問なんだけどその人間状態への変化って制限時間とかはないの?」


「あるわよ、変化にさっき女の人が言ってたみたいに魔力を使ってるからね、だいたい5時間ってところ。でも毎日朔耶の血を飲んでからは魔力が切れることなく変化を維持できてるんだ」


朱は毛づくろい?みたいなしぐさをしながら答えた。

僕の体って好都合すぎないか?まぁこれで外見の問題はクリアだ。


「よし、じゃあ血はどうにかして定期的に飲ませるとして、問題は朱、孤児は退魔師になるために修行を受けさせられる、中には魔物を使った拷問まがいな修行もある...君はそんなことに耐えられる?」


朱は迷うそぶりもなく即答した


「問題ないよ、朔耶が望むんだったら私はなんだってやるよ」

そう、あなたが望むんだったらなんでもする。

だってあなたに嫌われたくない。

あなたなしじゃ生きていけない。

もっと、もっと私を必要としてほしい、いっそのこと朔耶も私なしじゃ生きられないようにしたい...


「朱?聞いてる?」


「わっ、ごめんボーとしてた」


「大丈夫?もう一度いうね、送迎される孤児の中に紛れ込むのはいいけどいきなり知らない人が紛れ込むのは違和感があるだろ?だから朱は暗示の術式みたいなのは使えないかなって?」


暗示の術式は一時的に人にあることを思い込ませることができる術式だ、一時的だが周りの人に最初からいたと違和感さえ紛らわすことができたら自然に孤児達の中に紛れ込むことができるはずだ。


「多分大丈夫だと思う。野狐は人を山奥へ迷い込ませるとき暗示の術式は必須なの、私は使ったことないけど、群れの中にいた時一通り教えられたよ」


よし大きな問題はなさそうだな、あとは孤児受け入れの明後日まで待つだけだ。

その日まで僕は不自然なそぶりを雫に感知されぬよう座学にいそしむのであった。






 


 

 

 

 


 

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