第11話
僕は朱の話に衝撃を受けた。
喜びや感謝を求める魔物がいるとは!ほかにも探したらいるのか?
でも、今は朱だけが僕の希望だ。
「人間の喜びや感謝の感情を好むなんて、魔物として矛盾してるでしょ?
魔物からは嫌われて、人間からは排除される。誰からも求められない存在。こんな私はきっと生まれてきたことが間違いだった」
朱はそう弱々しい声で言った。
「そんなことはないよ。少なくとも僕は君を求めている。君がいや君だけが僕の夢の希望だ」
「夢?」
「うん、魔物と人間が共存する世界それが僕の夢、理想の世界だ朱の存在はまさに理想を体現するために必要なカギだ。誰がなんと言おうと僕は朱を存在を肯定するし、君を害す存在を排除する。」
「私が必要、私だけが希望・・・本当に?」
鳴きそうな顔で彼女は聞いてくる
「ああ!僕の夢に協力してくれる?」
僕はそういって朱にまだ血が滴る手を差し出す。
その手はつかまれることはなかった。
その代わり、朱は思いっきり抱き着いてきた。
「あ、朱?どうしたのいきなり?」
再び心臓が破裂しそうなほど高鳴るのを感じる。
朱の心音も体温も感じてしまう・・頭がどうにかなりそうだ。
「ごめんね・・でも今の表情はあんまり見せたくないな」
そういってしばらく二人は抱き着いたままの時間を過ごした
~朱視点~
「僕は朱の存在を肯定する」その言葉を聞いた瞬間から目頭があつくなってたまらなかった。
これまで自分を隠して生きてきた。
吐き気がする負の感情を我慢しながら食べてきた、魔物として矛盾する自分の存在に苦しんできた。
この人は私をその苦しみから解放してくれる。
現に私の存在を認めてくれた。その上私を必要としてくれる。
「本当?」と思わず聞き返してしまった。彼は迷うことなく肯定してくれた。
多分その時だ、私が朔耶に執着するようになったのは。
好きその気持ちで埋め尽くされていく。
その血も心もすべてを私だけのものにしたい。
あなたこそ私が生きる理由
狂ってるのは私もおんなじだった、どうしようもなくあなたに狂ってしまっている。
気づいたら、彼が血が滴る手を私に差し伸べてきていた。
その滴る血を見た瞬間体温が上がり体が彼の血求めるのを感じる。
もしかしたら私は彼の中毒になったのかもしれない。
たまらず抱き着いてしまった。これ以上血を見ていると我慢できない。
彼の心音を感じる。とても心地いい。自分にドキドキしてくれているのだろうか?
そうだったらうれしい。
決めた。たとえこの世のすべてがこの人の敵になっても私だけがこの人を肯定しよう
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