第10話
目の前にいた野狐が人間に変化した。
その姿を見た瞬間、僕は息をするのを忘れるほど見入ってしまった。
心臓が高鳴っていく音が聞こえる。鮮やかな柿のような朱色の髪、神秘的にすら感じられるその澄んだ黄金色の眼、しなやかなラインで造形された身体つき、細い指、白い肌そのすべてに魅了された。ずっと見つめていたいそう思っていると彼女の「・・・あの、大丈夫ですか?」という声で現実に戻された。
「あの、本当にあなたが私の傷を治してくれたの?人間の血を飲むだけで傷がこんなに治るとは聞いたこともないんだけども、とてもおいしいけど」
そんな疑問が問いかけられた。
「ああ、これは僕の一族特有の体質でね、僕の血肉は魔物たちにとってごちそうであり強力な治療薬でもあるんだよ。ちなみにどんな味がするの?」
「そうね、香ばしいような、甘ったるいようなー、それでいてほど良い苦みがあってー」
それおいしいのか?そんな自分の血の味についての評価を怪訝に思っていると。いきなり彼女が切り出してきた。
「まあそんなことは置いといて、助けてくれたことには感謝するわ、でもあなたは退魔師なんでしょ?なんで魔物である私を助けたの?もしかして・・・またあなたたちの練習台にされるとか?」
「そんなことはしないよ!よく退魔師だと分かったね、ああ、あの子たちが術式でもつかったのかな?僕の体を見たらわかるだろ?いま襲われたらいくら弱いと言われてる野狐からでも抵抗できないよ。」
僕は体中の包帯や治療の跡を見せつけるように両腕を広げ全身を見せた
「助けたのはまぁ、自分でもよくわからない。この傷だって魔物に付けられて、奴らのことを醜いって、憎いとすら思ってたのにやっぱり非情にはなれないんだ。」
「変な奴。それだけ傷つけられて、見たところ足の指まで食べられてるのに相手を恨まないなんて・・・あなたは優しいを通り越してどこか狂ってるのね」
こいつ恩人にたいして結構毒舌だな。あと最初の方からだいぶしゃべり方崩れてないか?
「それよりも、君の名前は?俺は朔耶」
強引に話題を変えてみた
「名前、そんなもの持ってないわ、どうせなら朔耶がつけて」
軽く彼女は答えた。
魔物は一人ひとり名前を持たないものなのか?・・じゃあ
少し思案してぼくは答えた。
「じゃあ、朱アカネで。理由は・・・その髪がとても鮮やかできれいに感じたから」
直接的か?もう少しひねるべきかと思って撤回しようとすると
「その・・毛並みをほめられたのは初めてで・・うれしい、ありがと」
そう恥じらった表情で受け入れられた。その顔を見るとまた心臓が高鳴ってくる。
二人ともだまって見つめる時間が流れる。また変な空気が流れ始めた。僕はその空気を払うように
また話題を変えた。
「朱はなんでこんなところに一人でいたの?野狐は群れる魔物でしょ?」
すると朱は途端に悲しい表情になってここに来た経緯を話し始めた。
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