第6話
「何だろう?この満足感」
魔物は感謝や喜びの感情は忌避するものなのに、自分にはとても暖かくて、何とも言えない心地よさを覚えた。
しかしそんな温かさとは裏腹に人間の子供が去ったこの空間にはとても冷たい殺気に満ちてきた。
「お前は、何をしたのかわかっているのか!?」
リーダーである老練の野狐が鬼気迫る表情で問いただしてくる。
「すいません、あの人間の子供の恐怖の感情がとても気持ち悪くて。つい・・」
「きもちわるい?とても甘美なものだっただろうが?お前はなにをいっているんだ?」
しまった!この発言は悪手だった、つい心地よさで気が緩んでいた。そう思ってももう遅い。
「我々がいま置かれている状況を理解しているな?この数週間、人間の悪感情を摂取していない。先日数頭の野狐はついに飢餓で死んだ。そして今しがた貴重な餌をお前は逃がした。お前にはその埋め合わせをしてもらう。」
勿論知っている、このままでは群れが全滅することも、あの人間の子供が最後のチャンスかもしれなかったのも。しかし、埋め合わせとはどういうことだろうか?
次のリーダーの発言は耳を疑うものだった。
「同族の負の感情でもある程度の腹の足しにはなる。」
全身が恐怖で本能的に硬くなるのを感じる。恐る恐る自分の運命を聞いてみた。
「それはつまり、群れの皆になぶり殺しにされろということですか?」
その瞬間皆の目つき獲物を狙う目つきに変わっていく。
「皆のもの、こ奴をとらえろー!!」
リーダーの怒号とともに一斉に動き出した。
私は我武者羅に逃げた。頭はパニック状態でもう逃げることしか考えられない。
足を止めたらお腹がすいて死ぬより、恐ろしい死に方が、狂気に満ちた死が待っている。その恐怖が頭を支配していく。
「!、まて!皆のものその先から言ってはならん!」
老練の野狐は逃げた裏切り者を追う足を止め、静止を呼び掛けた。
なぜです!
あの裏切り者をとらえないと!
群れのメンバーから疑問がなげかけられ、老練の野狐は冷静に答えた。
「ここから先は退魔の一族が住まう土地だ。しかも魔をとらえては実験や拷問まがいなことをして痛めつけたうえで道具として使い捨てると聞いたことがある。」
まずいな...ただでさえ奴らの近くでコソコソと狩りをしてたのに、群れが近くにいるとばれたらどうなるかわからない。裏切り者を逃がすのはおしいが、確実な全滅よりはこの土地から離れたほうがいいだろう。
野狐の群れはリーダーの判断に従い足早に狩場から離れていった。
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1000字て結構書けるものなんですね。
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