第1話

 久月家 それが僕が産まれた対魔の家の名前だった。

 久月家は広大な領地を有しており、魔物が蔓延る領域から人間が安全に生活できる領域を奪還し、国を起こした三勢力の一つである。

 物心着いた頃から、次期当主として退魔の思想、対魔の技術を植え付けられてきた。


 魔物がいかに悪いのか、実際に魔物を使った退魔の方法、それらを繰り返す日々 


「逃げたい」


 それが口癖だった


 そもそも理解ができなかった、姿形が違うだけで、人間と同じように痛がり、苦痛な表情を見せる生物を悪と断定する家訓が、そして彼らを気軽に家の子供達の修行相手として消費することが。

 そんな疑問をもつ僕だからこそいつからかはわからないが明確な理由も計画もなく魔物との共存を考えるようになっていた。


 ある日、対魔の修行でほとんど人間と変わらない姿の魔物が修行相手としてあてがわれた時があった。


 最初に手本を見せられた。


 指南役は、じわじわと低級の対魔の術式から、高等な術式まで効果を試していき、最後に体術のサンドバックのように使いなぶり殺しにした。


 そして、自分達が同じことをする番になり、他の子供達が魔物をなぶる中、僕は何もできなかった。魔物の苦しみの表情、涙をみて足がすくんだ。憐れみを抱いてしまった。


 指南役に疑問を投げかけた


「なんでそんなひどいことができるんですか?」と。


 そのことが父親つまり現当主に報告された。


 父は僕を呼び出しことの経緯を説明させられた。

 実際、僕は同様の理由で何度も父に呼び出しを食らっているが、父は魔物への同情心や憐れみを捨てるように忠告するだけで特に何もしなかった。しかし、今回は違った。


 父は鬼の形相で言った


「朔耶、俺はお前が5つの頃から忠告してきたぞ、お前はもう歳が10になった、久月家次期当主がこのような心情を持ってはならんのだ。再教育の準備をしろ」


 父が同席していた指南役に「再教育」の命令をすると、指南役は速やかに部屋から出て行き、僕は控えていた他の男たちに手足を縛られた。


「父さん!再教育とはなんですか!?僕はどうなるのですか!?」

必死に質問しても父は冷たい目を向けながら何も答えない。やがて、「ドスッ」というにぶい音と腹への衝撃と共に僕の意識は途切れた。




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 字が少ないですがこれから増やしていくつもりです

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