第15話 投げをうつ

ひゅん


 女性の身体を払おうとした男の腕は、女性によってあらぬ方向に曲げられ、そのまま投げられてしまったのだ。


どすん!


 片方の男が、背中側から床に叩きつけられる。男たちは、何が起こったのかわからない。

「まだ、やります?」

 女性は冷静に問うた。

 そして男たちは女性の顔を見るなり、驚愕へと変わっていった。


「げぇ! は、『白狼の牙』!」

「なんで『武王』がこんな所に?」

「いや、すまねぇ。俺らは何もしねぇよ」

 口々に降伏の言葉を漏らすと、全員その場をそそくさと離れて解散していった。なんとも情けない姿だ。


 その光景を見た僕は、言いようの無い感動のような心の揺さぶりを感じた。

「か、かっこいい……」

 まさに心から出た言葉だ。

 この時なのだろう。僕の心が決まったのは。


「おい! 見習い、行くぞ」

「あっ、はーい」

 騎士さまに促されて冒険者ギルドを後にする。

 僕は高揚感に包まれていた。ようやくだ。ようやくやりたい道が見つかったと。

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