第13話 近い終末
日が経つ、冬の彼女はいっとう幻想的だった。澄んだ空気の中で白い息を吐く。冬の冷たい洗練されたうつくしさが彼女をより引き立てる。その姿を見るだけでもううっとりとしてしまう。ある時は雨、ある時は風、そして雪が降る。この頃になると、あかりはもうかつての日常へと戻れなくなりかけていた。親には学校へ行くと嘘をついて、彼女の元へ通う。朝から夕方までの変化する環境に照らされる彼女を半日中じっと見つめて、時に鏡を一緒に見つめ、鏡の中の彼女と目が合った時にはその日うきうきで帰るのだ。
しかし、ついに学校に行っていないことがばれてしまった。連絡なく休み続ける生徒を学校は放っておくわけにはいかない。何かあったのか、家庭で問題が起きたのか。学校から家へと連絡がいったのである。親は親で仰天した。確かに最近は会話も減り、こちらが何を聞いてもぼうっとしていた。でも毎日学校へ行くからと制服を着て家を出ていく。
その二日後、朝、変わらずあかりは家を出ようとした。それを母が引き止める。学校から連絡が来たけれどもどういうことか。今日は家から出さない。何かあったのかと怒りと心配がないまぜになったような母の表情を見てはっとした。自分はとんでもないことをしたのだと。でももう冬になってから学校にはずっと行っていない。友達からの心配のメッセージもすべて無視した。説明しても信じてもらえないし、する気もなかった。彼女の存在がばれたらどうなるのか。中学生ながらに考えを巡らす。見せ物になる、捕まえられて研究される、それか殺されるのかもしれない、化け物だと。今、心配され大事に不安に思われているのはあかりである。しかしあかりの心は岬へと飛んでいた。もう終末は近い。
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