第12話 鏡
秋からぐっと冷え込む季節。頃は初冬。木々は枯れ身を貫くような風が吹き付ける。寒さに両手で自分の身を抱きしめよじるが気がまぎれることはない。ふと思い出す。あかりと出会った時もこの両手であかりの手を握りしめた。温かい、温かい手だった。滝は凍り北の海は流氷が流れる季節。この凝り固まった心を溶かしてくれるものはなかった。
そんなわたしを救ったのもまたあかりだった。心配そうに布をかけてくれる。端をぎゅっと握りしめ、あかりの目を見つめる。安心させたくてくすりと笑った。この布を、寒さのせいにして縋りつくことは秘密にしておきたい。結局はそこに辿り着く。ぼうっとしていると、あかりも笑った。ふたりで布をかけあいながら、今日もかがみを見つめるのだ。
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