第7話 俺らの今後の部活方針!

 午後の授業を終えた後は部活の時間であり、綾瀬晴馬あやせ/はるまはクラスメイトの飯田瑠璃いいだ/るりと一緒に部室棟の部室まで向かう。


 動物愛好部の扉を開けると、すでに中戸千秋なかど/ちあきはいた。

 彼女は部室内にいる動物への餌やりをしていたのだ。


「中戸さん早いね」

「そうよ、私のクラスは早めに終わったからね。部活前に、この子らの食事をさせておいたから」


 ハムスター、亀、ウサギは籠の中でも元気そうな表情を見せていた。

 お腹が空いていたのか、餌に夢中で周りにいる晴馬と瑠璃の存在には気づいていないようだった。




「それで今日はどんな事をする? また、外に出て鹿に餌やりでも?」


 そう言って千秋は頭のところに鹿の角を模したカチューシャをつけていた。


「今日はいいよ。それより、今後の事についてしっかりと話したいんだ」

「今後のことね。まあ、そうだよね。じゃあ、話そうか。その方がいいよね」


 三人は部室の長テーブルに囲うようにパイプ椅子に座る。


「議論はどんなのにするの? 晴馬くんは」

「そうだな、んー、実績に残せるような活動について話したいんだ」

「実績ねぇ、うーん、じゃあねぇ……」


 千秋は腕組をして悩み始めたのだ。


「そうだ、じゃあさ、動物の大会に出るとか?」

「え? 動物レース的な?」


 晴馬は驚いた目で千秋を見る。


「そうそう」

「でも、そういう練習はしたことないよね?」

「そうだけど、実績という事なら、それが一番手っ取り早いかなって」

「確かに、そうなんだけど」


 晴馬は部室の棚に置かれている籠の方を見やる。


 レースに参加させるとしても、ハムスター、亀、ウサギは対象外だったはずだ。

 参加するとしても犬を購入。または借りるか。そのどちらかの選択を取るしかないのだ。

 犬を預かった事はあっても、レース用に許可してくれるかは不明である。


「中戸さんは、貸し出してくれる当てはあるの?」

「それはあるわ」

「練習は? どこでやるの?」


 晴馬は質問を重ねてみる。


「それはどこかのグランドか体育館を借りて」

「それだとお金がかかるんじゃない?」

「そ、そうだね。じゃあ、学校のグランドは?」


 千秋は閃いたように言う。


「それは他の部活が利用すると思うから無理だと思うわ」


 瑠璃が補足説明を施す。


「そ、そっか。じゃあ、無理かもだね。練習先の確保が無理なら、レースの参加は無理そうね」

「そもそも、レースに拘る必要は無いと思うよ。別の方法を考えない?」


 瑠璃から言われ、再び千秋は腕組をして悩み始めるのだ。


「そうだ、そう言えば、以前どこかで聞いたことがあるんだけど。保護動物の遊び相手になるボランティアがあったはずよ」

「保護動物ね。それもいいわね。ちょっと待ってて」


 瑠璃の提案に、千秋はテーブルに置かれたノートパソコンを開いて検索をかけ始めるのだ。


「これね」


 千秋はそのHPを見つけたのか、晴馬と瑠璃にノートパソコンの画面を見せてきた。


 HPには保護動物ボランティア協会と書かれており、活動としては動物と遊んだり、里親を探したり、募金活動をするといった内容だった。


 今は一〇名程度で活動をしているらしく、そこまで規模は大きくはないが、HPを拝見する限り、まだボランティアを募集しているようだ。


「その活動なら、高校生の俺らにも出来そうだし。動物愛好部としてやるのには一番適しているかもね」


 晴馬も共感し、やってみようと思っていた。


「場所はね……学校近くのバス停から一〇分ほどかかるみたい。ここの地図が載ってるよ。ほら」


 千秋は、HPのアクセス先のところをカーソルでクリックしていた。


「でも、バス代がかかっちゃうけど、行き帰り合わせて四〇〇円は事前投資だと思えば安いかも」

「そ、そうだね、それでも結構高いけどね」


 瑠璃からすれば問題はないのかもしれないが、晴馬からすれば結構な大金だった。

 なんせ頑張ればジュースを三本は購入できる可能性があるからだ。


「でも、毎日は難しいかも。近場であればよかったんだけど。そうだ、金曜日の放課後とか、学校がない日にすれば問題かも! 二人は今週中は空いてる?」


 千秋は二人の方を交互に見やる。


「私は……どうする綾瀬さん」

「でも、動物園は後でもいいし」

「だけど」


 二人は千秋には聞こえない程度の小声でやり取りをしていた。


「どうかしたの?」


 事情を知らない千秋は首を傾げていた。


「もしかして、二人とも用事があるとか? それなら無理強いはしないよ」

「え、まあ、そうね。できれば別の日がいいわよね、綾瀬さん」

「そうだね、飯田さん」


 一応、動物園にはデートという目的で行く予定であり、瑠璃は動物園に行くという話を千秋の前ではしたくないのだろう。


「まあ、予定があるなら、いいよ。じゃあ、金曜日の放課後に行こ。その方が時間を取れるでしょ?」

「そ、そうね。綾瀬さんもそれでいいかしら?」

「お、俺もそれで」


 二人のぎこちない表情に、千秋は再び首を傾げるだけだった。


「じゃあ、それで決まりということで。あとは事前準備をしないとね!」


 金曜日といえども、それは明日なのだ。

 今日の段階で準備する必要性があり、千秋はパソコンの画面と睨めっこしながら、必要事項のところを真剣な眼差しで見ている。


「えっと、動きやすい服装で来てくださいって書かれてるよ。ジャージの方がいいかな?」

「そうだね。学校指定ジャージでもいいかも」


 瑠璃もパソコン画面を覗き込んで相槌を打っていた。

 晴馬もパソコンの画面が見やすい位置まで向かって行き、二人の近くで内容を確認する。


「じゃあ、明日に向けて張り切って行きましょう!」


 千秋は元気な掛け声を出し、テンションを高めていた。


 晴馬も同調するように軽く掛け声を出す。

 でも、少し恥ずかしかった。

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