✦第15話✦ 地獄に、ひとりぼっち!?
ビュオオオオーー。
勢いよく吹きつける風。
あたしたち3人は、ついにここまでやって来た。
「あの黒い大岩の向こうに、『悪魔の心臓』が……?」
「ブキミなところですわね」
あたしたちが、辺りを見渡していた、その時。
──キタナ。ニジュックミメノ、エンジェルコウホセイ
トツゼン、胸にズシンと響く、気味の悪い重低音。
20組目⁉
っていうことは、あたしたちの前にも、ここへやってきた
──シンゾウガ、ホシイカ?
ゆらり、とうごめくいくつもの影。
その奥から現れた、ひときわ大きな影が、こっちへと少しずつ迫ってくる。
ひえええっ!
アレが、『悪魔の心臓』を守る、死神!?
「にな! あやみ、気をつけろ!」
キョウスケが叫ぶ。
──オレタチノシンゾウヲ、クレテヤッテモヨイ
って、へっ!? 『悪魔の心臓』を、くれるの?
こんなにカンタンに⁉
──ソノカワリ、リーダーハココニノコレ
って。まだ続きはあったみたい。
リーダーは、ここに残れ?
……リーダーって、誰だったっけ。
やばいやばいやばい、リーダーって、あたしだよっ!
ってことは、あたしはずっと……
「地獄で生活⁉」
うぇええええー⁉
やだやだやだ!
さっき襲われた時みたいに、毎日毎日、来る日も来る日も超巨大グモに追いかけ回されて。
天国みたいに美味しい食べ物もジュースも、なにもなくて。
おまけに辺りは真っ暗で、たまに吹く風は、とても冷たい……。
最終的にはストレスで死んじゃう……だなんて!
サアァーッ。
あたしは、自分が
「地獄で生活だなんて、そんなのいやーーーー!」
「落ち着けにな! リーダーは地獄で暮らすだなんて、になは
あわてふためくあたしに、キョウスケが「落ち着けって!」と言う。
──オマエガ、リーダーダナ
「うおっ⁉」
「きゃああっ!」
その時、キョウスケとあやみんが、ブワッと宙に浮かんだ。
透明な結界に、閉じ込められたのだ。
──死神が、ふたりに結界をはったんだ!
「キョウスケ! あやみん!」
──サテ、リーダーヨ。オマエニ問ウ。コノフタリヲタスケ、オマエガ地獄にノコルカ?
──なるほど。
ここにきて、この試練。
──真ノリーダーノソシツガ、オマエニアルカ?
くつくつくつ、と死神が
さすが、死神。
「汚ねーぞ死神ィっ!」
キョウスケが、結界をガンガンなぐりつける。
でも、死神のチカラで生みだされた結界はビクともしない。
どうしよう⁉
キョウスケとあやみんを助けることを選んだら、あたしは二度とおとんに会えなくなっちゃう!
まさに、キューキョクの選択、だ。
あたしは、死神をにらみつけながら、おでこに汗がにじむのを感じていた。
どうする⁉
──はい! よろしくお願いしますわ。になさん
──はん。気の強ぇ女。正義のヒロイン気どった上に……
──…………?
その時、あたしの心に、あたしたち3人がはじめて出会った時の光景が浮かんできた。
あやみん。あやみんは、最初泣きそうな顔をしてたね。
あたし、ほっとけなかった。あのんちゃんたちからあやみんを助けたこと、本当に良かったと思ってる。だって、それがきっかけで、こんなにも仲良くなれたんだから。
キョウスケ。最初の頃は、サイテー男子だって思ってた。
いつもいじわるなことばっかり言ってくるし。
でも……ほんとは優しくて、すっごくすっごく、あったかい心を持った男の子なんだ。
そう。多分あたし、キョウスケのこと……。
ぐっ、とこぶしを強く握ったあたしは、死神に問いかける。
「あたしが。地獄に残れば、キョウスケとあやみんは助かるの……? ねぇ、死神」
──ソウダ
なら!
「あたしが地獄に残る! そのかわり、キョウスケとあやみんを解放して『悪魔の心臓』をこっちに渡して! 仲間を見捨てるくらいなら、試練なんて、もうどーでもいいよ!」
あたしは、振り切るように叫んだ。
「にな……」
「になさん……」
パチン! と、キョウスケとあやみんを閉じ込めていた結界が弾けて、ふわっ、とふたりが地面に降り立つ。
「……えへへっ。しょーがないよねっ! おとんには、もう会えなくなっちゃったけど……、あたし、キョウスケとあやみんをこのまま見捨てるなんて、できないもんっ!」
──キョウスケトアヤミヲ、天国ヘカエシテヤル
天国へと通じる扉が現れて、キョウスケとあやみんが、吸い込まれてゆく。
あとに残ったのは、あたし一人。
「……ひとりぼっちになっちゃった。クロンも、いない……」
「ふぇええーん」
地獄に、あたしの泣き声だけがむなしく響き渡った。
* * *
「……ん? なに、この光は……」
しばらくしゃがみこんで泣いていた、あたし。
まばゆい光と一緒に、目の前に現れたのは──。
「にな!」
「になさん!」
キョウスケと、あやみんだ。
「キョウスケ! あやみん!」
あやみんが、あたしの胸に飛び込んでくる。
「なんで、戻ってきたの⁉」
あたしの問いに、キョウスケは、あたしのおでこにデコピンをくらわす。
「イタッ!」
「ばーーーか! こんな、暗いところに一人で居なくたっていいんだよ! オレとあやみが、お前をひとりにするとでも⁉」
「になさんが地獄にいるのなら、私たちも、一緒ですわ。だって私たちは」
「「
キョウスケとあやみんの声が重なる。
あたしたちは、3人で抱き合った。
「になぁ……良かったクロなぁ」
クロンが、瞳をうるうるさせてる。
ほんとにね……。
あたしたちってもしかして、最高の
心から、そう思った。
「さて、感動の再会を果たしたとして、どうやってまた天国へ帰るかだよなー……」
「それですわね」
全員がアタマを悩ませたところで、ぱあああっ、と、キョウスケとあやみんが地獄に来た時と同じまばゆい光がその場を照らした。
光の中から現れたのは……。
頭がツルピカで、めちゃくちゃ背の低い、
「ほっほー☆ ぬしらの仲間を想うアツい気持ち、しかとこのわしの目に焼きついたぞ!」
「「「満月みつる校長先生⁉」」」
「いかにも」と、満月みつる校長先生はヒゲをなでる。
「さあ、仲間想いの
★ ☆ ★
──ふっわふわで、もっこもこな雲。
見上げれば突き抜けるように澄んだ青空がどこまでも広がっている。
そして時折キレイな音を立てながら、金色の粒がキラキラと舞い落ちてくる──。
「あたしたち、天国へ帰ってきた⁉」
「ふむ。その通りじゃ☆」
「やったああー!」
思わず
「ところで、クロン。あやみんが一役買うことになるって言ってたよね? あれってどういう意味だったの?」
あたしはクロンに問いかける。
「あやみは実は、死神を倒すだけのトクベツなチカラがあったんだクロ。トクベツな魔力が、あやみのつけているそのバッチには
って、ほええぇえー!
ソウダッタタノ⁉
「ヒミツにしていて、すみませんでしたわ」
「あやみは、そのバッチのチカラを使って死神を倒すこともできた。でも、になとキョウスケを信じていたから、バッチのチカラには頼らなかったんだクロ」
そうだったんだ……。
あやみんの、あたしとキョウスケ、仲間を信じる気持ちが、最終試練合格へと近づかせてくれたんだね。
「喜ぶのはまだ早いぞい。第523
満月みつる校長先生の言葉に、クラッカーがけたたましく、パパパパンッ! と鳴り響いた。
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