✦第4話✦ 命がけの初ミッション!?
入学式が終わった後。あたしとあやみんはクロンから、
「正式に学園の生徒になったから、今日からは学園の寮に住むことになるクロ。になとあやみは、同じ部屋クロよ」
と言われた。
「部屋は、ここクロ」
「うわー! すごいすごい! 見て! あやみん! 外に露天風呂まである! エンデビ学園サイッコー!」
「すごいですわね」
一流ホテルのスイートルームみたい! とはしゃぐあたしとあやみん。
あたしは、ふと部屋の棚に置いてあるものを見て、「あ」と声をもらした。
「おとん……と、ママ」
そこには、家族の写真が飾られていた。
幼稚園の頃、家族みんなで海に行った時の写真だった。砂でお城を作りながら、水着姿でカメラに向かってピースするあたし。そして、あたしと一緒に泥だらけになりながら、お城を作るおとん。笑っているママ。
「になさんのご家族ですか? 素敵ですわね」
あやみんが横から、ほほえみながらそう言う。
「あたしのネックレスも……!」
10歳の誕生日に、デパートでおとんに買ってもらった、ピンクの星のネックレス。
──これにする! おとんありがとっ! だーい好きっ!
あたしは、あふれそうになる涙をこらえてから、パッと
「ねぇ、クロン。あやみんの家族の写真は?」
すると、なぜか黙りこむクロン。
あやみんはなんともない
「私は、プライベートで家族全員で写真を撮ってもらったことはありませんわ」
と言った。
プライベート? って、なんか有名人みたいな言い方じゃない?
ん? 待てよ。宝来あやみ……宝来……
あたしは、『時代の最先端。技術と革命の宝来グループ!』の、とある車会社のCMを思い出した。
「……あやみんって、もしかして」
「そう。総資産50兆円、企業が海外進出を果たしている宝来グループの社長の、一人娘ですわ」
「社長令嬢!」
どええーっ! すごすぎる! どうりで、なんかお金持ちのお嬢様って感じがしたよ!
だって、あやみんってば、あたしより1つ年下なだけの同じ小学生なのに、敬語が妙に板についてるし、なにより気品にあふれているから。
「母親は、すでに他界しています。祖父と祖母はフランスにいて、なかなかお会いすることができません。兄弟もいませんので、父だけですわ」
「……寂しくなかった?」
「これからは、寂しくありませんわ。だって」
あやみんはにこっとほほえんでから、
「こうしてになさんと、お友達になれましたもの」
と言った。
「このぉ! 可愛いやつめ!」
あたしは、あやみんを力いっぱい、ぎゅううっと抱きしめた。
★ ☆ ★
ドキドキドキドキ。
あたしとキョウスケとあやみんは、エンデビ学園の先生の前にいた。
今日は、
心なしか、キョウスケとあやみんの表情もこわばっているような気がした。
「にな班の初ミッションを伝える」
いよいよだ……。どんな任務が与えられるの!? うーっ、緊張する!
「出動せよ」
「……はい?」
あたしたち3人の目が、点になる。
先生は続けた。
「天国番地4丁目で、銀行強盗だ。今すぐ犯人確保に向かえ。なお、このミッションは初任務としては難易度がレベル5と高い。よって成績も高得点をつけることを約束する」
「ええええ⁉」
先生にもらった地図を見ながら、雲の上を走って移動するあたしたち。
「なんっであたしが! あたしたちが! 命がけで人助けしなきゃなんないのーっ! もう死んじゃってるとはいえ、怖いものは怖いんだからねっ!」
しかも銀行強盗!
初ミッションが命がけって、どういうこと⁉
わーん!(泣)
ふと、あやみんの方を向くと、あやみんは走りながら、恐怖から震えちゃってる。
キョウスケもそのことに気づいたのか、あやみんに声をかける。
「あやみ、大丈夫か?」
「……っ、はい。大丈夫、ですわ」
キョウスケが「作戦立てねえとな」と、走りながら少し真剣な表情で言う。
「前線は怪力のになだ。あやみはガンガン戦うタイプじゃなさそうだから、犯人の様子を見て合図しろ。オレが、仕留める」
「って、なにげにあたしが一番危険な役じゃない⁉ あたしだって、怪力といえども一応ちゃんとした女の子なんだからね! キョウスケのバカ!」
ほんと、怪力ってだけでつくづくソンしてるよね。あたし!
……でも。キョウスケってば、ちゃんとあやみんのこと考えてあげてるんだ。
入学式の時だって、スグ謝ってきたし、そんなに悪いヤツじゃない……のかな? よくわかんないや。
あたしは、お守りがわりにさっそくいつでも身につけていることにした、おとんからもらったピンクの星のネックレスにそっと触れた。
「次にどうやって現場に入るかだが、アメリカの警察がよくやる手でいこう」
「わかりましたわ」
アメリカの警察? FBIとか?
あたしは投げやりに返事する。
「えーえ。どーせあたしがやらなきゃいけないんでしょ〜っと」
「任せたぞ。にな」
2分後。現場に到着。
「ピ、ピザを届けに参りましたぁ」
あたしは、クロンの
一気に集まる視線。
ロープでぐるぐる巻きにされた人たちが、床に座ってあたしを不安げに見つめてくる。
っていうか、めっちゃ怖いんですけど! シャレになんない怖さ!
こんな危険な役をやらせるなんて、ぐぬぬ、キョウスケめ!
「あ? ピザだと? 銀行にそんなもん誰が頼むんだよ。……お前か?」
銀行強盗は、コワモテの若い男だった。
銀行の店員さんは、ピストルを向けられて「ひぃっ」と怯えちゃってる。
あたしは刺激しないように、箱を開けて、美味しそうなピザを見せながら言った。
「お兄さんお兄さん、それ、一旦下ろしてください。間違いだったみたいなので、よかったら、冷めちゃうのでこのピザ食べてください」
「いいのか?」
「ここにサインを……」
犯人がピザにつられて、近くに来たその瞬間!
ボフンッ!
あたり一面は白いケムリで充満する。
「ピザ爆弾成功っ! ……って、あり?」
ガチャッ!
重ーい、冷たーい、頭に
「お、お兄さん。これ?」
「ピストルだよ」
──あたしはピストルを突きつけられた。
いやいやいやいや、ないないないない! ないから! 何この展開! 二度も死ぬなんて、絶対いやなんだからあ!
「そこまでだ! 伏せろにな!」
入ってきたキョウスケが犯人めがけて、石を投げつけた!
犯人のうでから解放されたあたしは、よろけて勢いよく床に尻もちをついた。
「痛ッ!」
「になさん!」
「動くな!」
あたしにかけよろうとしたあやみんが、犯人の大声にビクッと固まる。
「これが見えないのか!?」
! ピストル……
「武器持つなんて、こんの、
あやみんにピストルを向けたことが許せなくて、あたしは怖さも忘れて、起き上がって犯人に飛び蹴りをくらわした。
落ちたピストルをすばやく拾い上げる。
「これが見えないのかですって⁉ こんなもの、破壊してやるんだからッ!」
あたしはピストルを、バキッとチョップで壊す。
「わああ! ピストルが〜っ!」
そこからは、完全にあたしとキョウスケのターンだった。
「ほあちゃあ!」
ピストルを壊されたことに怯んだ犯人を、得意の回し蹴りで撃退。
「らあッ!」
キョウスケは、さわぎを聞きつけて奥から出てきた犯人の仲間を次々と倒していく。
あたしたちが暴れるその間にあやみんが、人質となっていた銀行員たちを安全な外へと誘導し、逃していく。
「あんた、意外と強かったんだね」
「まあな」
はあっ、はあっと肩で息をつきながら、あたしとキョウスケは背中を合わせて、のびている犯人たちを見下ろす。
「これでゼンブか?」
「みたいだね」
全員やっつけた時、けたたましい警察のサイレンが近づいてきた。
あれよあれよという間に、
あやみんが事情を詳しく説明し、あたしとキョウスケも話を聞かれ、初ミッションは終わった。
ふぅ……。なんか、すごい大仕事したって感じ。
「
エンデビ学園への帰り道、あやみんがあたしと同じことを思ったらしく、そう言った。
「それにしてもになはスゲーな。ピストル破壊するとか、本当はゴリラなんじゃね?」
キョウスケの言葉に、バッキィ! と鉄拳をくらわせた。
★ ☆ ★
「て、ゆーかね」
かっぽーん☆
その日の夜。
あたしは、部屋についてる超☆ゴージャスな露天風呂に入りながらクロンに問いかける。
「ここ、天国なんだよね? なんで銀行強盗とかするやつがいるわけ?」
「捕まったあとは地獄行きクロ」
「そういう問題じゃあなああーい!」
天国の超ゴージャスな寮に、あたしの絶叫が響き渡った。
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