第6話 堕天使の密やかな隠れ家

休日の朝、レオンとカイは早めに家を出て、一緒にアウトドアを楽しむ計画を立てていた。しかし、天気予報が外れ、朝から激しい雨が降り続いていた。二人は予定を変更して、近くのホテルに避難することにした。


「天気予報、全然当たらなかったな。」

カイが雨音を聞きながら呟く。


「そうだな。まあ、こういう時もあるさ。ホテルでゆっくり過ごせばいいさ。」

レオンが笑いながら応じる。


ホテルに到着すると、受付でチェックインを済ませ、部屋に向かった。ところが、予想外の問題が発生した。予約した部屋には、ベッドが一つしかないのだ。


「え、これって…一つしかないじゃないか。」

カイが部屋の中を見回しながら言う。


「本当に申し訳ありません。急な雨で満室になってしまい、他の部屋が空いていません。」

フロントのスタッフが恐縮しながら説明する。


「わかった、仕方ないな。」

レオンが軽くため息をつきながら、カイを見つめる。


「まあ、どうせ仕方ないし、これで過ごすしかないな。」

カイが笑顔で言う。


二人は、部屋の中にある唯一のベッドを見つめながら、何とも微妙な空気が漂っていた。レオンはその状況に気づき、中二病心をくすぐるような発言をする。


「これが堕天使の試練だと思えば、どうということはないさ。これも運命の一部だろう。」

レオンが真剣な顔で言う。


「そうだな、運命の試練かもしれないな。」

カイも真面目な顔で同調するが、目には明らかな戸惑いが浮かんでいた。


「まずは、荷物を片付けよう。ベッドの上に荷物を広げるのは嫌だろう。」

レオンが指示を出すと、カイもその通りに荷物を整理し始めた。準備が整うと、二人はソファに座り、何をするかを考え始めた。


「さて、どうしようか。これだけ雨が降っていると、外に出るのも難しいし。」

カイが窓の外を見ながら言う。


「そうだな。どうせなら、こういう時こそ、お互いの秘密を暴露し合うというのも面白いかもしれない。」

レオンが提案する。


「秘密か…お前の秘密は、なんだ?」

カイが興味津々で聞く。


「それは、お前が最初に言うべきだろう。」

レオンが笑いながら言うと、カイもつられて笑う。


会話が続く中、時間はあっという間に過ぎていき、夜が近づいてきた。二人は夕食をとり、少しリラックスした状態で再びベッドを見つめる。


「さて、寝る時間だな。」

レオンがベッドを見ながら言う。


「うん、そうだな。」

カイが同意しながらも、どこか気まずそうにする。


「じゃあ、どうする?二人で一緒に寝ることになるわけだが。」

レオンがわざとらしく真剣な顔で言う。


「仕方ないな、堕天使の試練だと思って、受け入れるしかない。」

カイが照れくさい笑顔で応じる。


二人はベッドに腰を下ろし、しばらく黙っていた。カイがレオンに話しかける。「レオン、どうしても恥ずかしいな。」


「うん、俺も同じだ。でも、こういう時こそ中二病の力を借りるべきだろう。」

レオンが少し勇気を振り絞って言う。


「そうだな。俺たちは漆黒の堕天使なんだから、こんなことで驚いてはいられないな。」

カイが自分を励ましながら言う。


二人は、ベッドの端と端にそれぞれ横になり、まるで中二病的な理由で気を紛らわせようとするかのように、それぞれの位置にこだわった。


「レオン、お前の寝息を聞くと、安心できる気がするな。」

カイが少し恥ずかしそうに言う。


「お前も、そう感じるのか。俺もお前と一緒にいると、心が落ち着く。」

レオンが優しく応じる。


そのまま、二人は少しずつ近づき、自然に体を寄せ合うようになった。ベッドが狭いことで、どうしても密着せざるを得なかった。お互いの体温を感じながら、心の距離も一層縮まっていった。


「お前と一緒にいると、どんな困難も乗り越えられる気がする。」

カイが静かに呟く。


「そうだな、俺もお前と一緒なら、どんな試練でも乗り越えられる気がする。」

レオンが優しく答える。


二人は、少しずつ眠りに落ちていく中で、互いに安心感を抱きながら、その夜を過ごした。雨の音が心地よく響く中、二人の新たな関係が一層深まっていくのを感じながら、彼らは静かな夜を迎えた。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る