第29話 兄さん頼り
一人でいることだし冷静に考えてみよう。
おそらく予算は一万円前後。高校生の私がはりきって高校生の彼氏にプレゼントするというのならそのあたりだと予想はつけられる。
手作りのものではない。私はそれなりのものは作れるけれど、本当にそれなりだ。売り物になる程のものや自慢になる程のものは作れそうにない。まさか手作りこそ気持ちがこもっているだなんて言い出したりしなかったはずだ。
静からのリクエストもとくになかったはず。プレゼントなんて遠慮しそうなくらいなんだから。
そして贈ったら静が周りに自慢するようなもの。静はだいぶ変わり者だから読めないけど、そこまで外したプレゼントではないということだ。
だめだ。わからない。
「静君、もう出かけたのか?」
兄が起きてくる。昨日は仕事に行って、その後友達と飲みに出て、それで結婚祝いにしこたま飲まされたとかでこんな時間に起きてきた。こころなしか顔色が悪い。
「うん。兄さんにコンソメスープとか作っておいてくれてるよ」
「それはありがたい。本当に気がきくな。あれで中身高校生だなんて気配りできすぎだろう」
そう、静は高校生の時から気配りができている。
そんな静から出されたクイズ……なにか、ちょっとひらめきそうな。
スープの鍋をかきまわす兄さんの背中を見て、私はひらめいた。
そうだ、兄さんに聞けばいい。当時の私はアリバイ作りとして兄さんに相談もしたんだから、きっと何かは覚えている。
「兄さん。静にプレゼントあげるなら、何をあげたたらいいと思う?」
さすがに兄さんにまで昔あげたプレゼントを忘れただなんて言えない。今の静は中身高校生なわけだし、今あげたいプレゼントの話から答えを引き出せるかもしれない。
「静君へのプレゼントか……前も誕生日で悩んでたよな」
「そう。影武者の件がかなり助かってて、是非またお礼としてプレゼントしたいなって」
「それはいいな。アイデアでも資金面でも俺も協力したい」
私の適当についた嘘に兄さんはのっかる。最低最悪記録は更新して罪悪感が増した。
「大人……いや、今は高校生なんだよな。でも記憶が戻った時の事を考えて、大人用のプレゼントをしたほうがいいか」
「ううん、静って元から大人びているし! 高校生用のプレゼントでいいんじゃないかなっ?」
「うーん……高校生でも大人びたプレゼントが良さそうだが。文房具とか勉強に関わるものは無し。食べ物も量より質、いや下手に食べ慣れてるものを贈るわけにはいかないか」
果たしてこれだけ嘘を重ねて本当にヒントを得られるのだろうか。それでも兄さんは必死に考えてくれる。
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