第21話 被害者か加害者か
その事故はその追いかけていた人のせい、というのは言い過ぎかもしれないけど、静やはねた運転手に謝罪くらいはするべきた。ドラレコ以外にも町中にはカメラがいっぱいあって、どこかに写っているはず。そして事故になったのならそれを調べる事もできるはずだ。
『それは……調べられたかもしれないけれど、怖くてしていないの』
「怖い?」
『ええ、万引き犯を追いかけたら事故になったとか、世の中にはそういうこともあるでしょう?……静がそうだとは思いたくはないけれど』
私はその点を失念していた。
そうだ、追われるという事は何かの被害にあっていたかもしれないけれど、何か加害したためとも考えられる。それならなんで追いかけていた人は名乗り出ず逃げたのかと思うけど、例え相手が悪人だって自分が追いかけたせいで事故れば気まずくて、その場から立ち去りなかったことにしたい。
静が追われるような悪事を働くとは思えないけど、私の知る静は高校生の静の話だ。酔っていればわからないし、そんな疑いも頭の中に入れておいた方がいい。
「……そこまでは思い至らなかったです。私は静のこと、完全に被害者だと思いこんでて」
『いいのよ。それだけ望さんは静の事を信じていたということだから』
声には出さず頷く。私は静を信じていてもなんの責任はないけれど、親としてはそうじゃない。責任のある立場なのだから、例え心優しい我が子であっても加害者になる可能性だって考えなくてはならない。
真実はあばいていいものとは限らない。そもそもあばいたところで静の記憶は戻るとは限らない。
でもやっぱり私には、静はなにかよくわからないことに巻き込まれて逃げて事故にあった、としか考えられないけど。
「後で本人にも連絡させます」
『あまり期待せず待っておくわ』
その後、私と静母、真佐子さんと連絡先を交換した。お互い何かあればすぐに伝えるという約束を交わしたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます