第20話 車載カメラの情報
『あの子、にこにこしてぼんやりしてるでしょ。そのせいか女の子が勝手に世話焼いて、自分が彼女になるしかないって思わせちゃうのよね。だから悪意のない子もいたりいなかったりで』
「あー……それちょっとわかります。何かしてやるとちゃんとお礼言ってくれますし」
『でも静は教えた事がそれなりに出来るから、結構自分でやれるのよ。なのに静の意思を無視して世話やいて依存させようとする子が多くってね。望さんならそんなことないから安心だわ』
私も自称彼女と信用具合ではそれほど変わらないのでは? と思っていたけれど大きく違うようだ。私は最低限の、彼氏彼女のアリバイとしてしか世話をやかないし。なにより静が覚えている相手だから本人やその家族にも信用されているらしい。誘拐扱いはされないでほっとした。
でも静の家族からして見れば心配な状況というのは変わりない。せめてどうしているかくらいは伝えておこう
「今、静がどこまで覚えているか確認をしつつ、どうにか記憶を取り戻させようとしているんです。私も仕事あってあまり聞けないしすぐ脱線するのでなかなか進まないんですけど」
『あら……でもいいのに。事故については気になるけど無事なのだし、記憶は戻らなくても。ここからでもやり直せるわよ』
静母も息子と同じく楽観的なようだ。確かにやり直しも高校生までの知識があるだけにそこまで難しいことではない。問題は仕事くらいだろう。
「でも私も、ちょっと気になっているんです。静は慎重な方なのに徒歩と車で事故にあうなんて。あの人、歩きスマホも絶対にしなかったくらいなのに」
ちょっとした謎かもしれないけど、そこは気になっている。彼は品がいい。歩きスマホなんて絶対にしないはずだ。しかし当時静を私は知らない。一番詳しく知っているのは事故相手の運転手くらいだ。
その運転手が飲酒などの違反をしたわけでもないようだし、静が酔っていたらわからないけど……
『……そうよね。あの子はぼやっとしているけどバカじゃない。事故だなんて、よほどの事がなければ起きなかったはず……』
電話向こうの静母の言葉は急に低くなった。
なにか、私は言ってはいけないような事を、言ってしまっただろうか。
『静ね、高校の同窓会の帰りだったの。だからお酒は飲んでいたと思う』
大きな声で聞き返そうとしたのを抑える。私は同窓会なんて知らない。誘われてないのが微妙にショックだが、今はそういう話じゃない。
『さらに言うと、静は何者かに追われていたみたいなの』
「えっ?」
『相手方の車載カメラに画像が残っていたの。静が後ろを気にしながら車道へ飛び出してくる様子が』
慎重な静が事故にあった理由。それは確かに違和感のあるものだった。
つまり静は何者かに追われていたんだ。だから後ろを気にしながら走っていた。前方を確認せず車道に飛び出して、車に跳ねられてしまった。
「その、追いかけていた人は?」
『わからないの。静の事故に救護活動や通報をしたのははねた車の運転手だけ。追いかけていた人は立ち去って、今も名乗り出ず黙っていると思う』
「街の防犯カメラとかは? それなら追われる静とその人が写っているのかも」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます