あなたに恋したのは私だった。

星尾月夜

第1話 転校生

「こんにちは。この学校に転校してきた野薔薇蓮央と言います。よろしくお願いします。」


凛とした声に、スラッとしたスタイル。そして、顔立ちが整っていて、髪もサラサラしているようで、ものすごくかっこいい——野薔薇蓮央という子が、私のクラスに転校してきた。私たちクラスはそのかっこよさに男女関わらず見惚れて、一瞬静まり返ったかのようにシーンとなった。先生も見惚れているようだ。


「先生、僕はどこに座ればいいですか?」


野薔薇蓮央くんが、先生に聞く。その声もカッコよくて、私たちは本当に静かになった。先生は、たじろぎながらもやっとの言葉で言う。


「え、えっと——た、確か、花咲梨華さんの隣じゃないかしら——あそこに座りましょうね。」


先生の言葉に、私はハッと目を見開いた。花咲梨華——それは、私だ。周りの子からの視線がものすごく痛くて、前を向けない。私は俯いているばかりだった。クラスの雰囲気とは別に、野薔薇蓮央くんは私の席の隣までトコトコ歩いてきて、私の隣の席に座る。私は、ゴクリと唾を飲んだ。心臓もバクバクしている。


「は、はい、転校生も席に座ったことだし、早速授業を始めましょうか。授業とは言っても、一時間目は自己紹介です。野薔薇蓮央くんから始めましょうか。の、野薔薇蓮央くん、前に出てきてください。」


「はい。」


一言だけそう答えて、野薔薇蓮央くんは教卓の前までやってきた。どうしよう、心臓が飛び出しそうなくらいドキドキしている。私は、恋でもしたのだろうか。


「僕の名前はさっき言った通り、野薔薇蓮央です。特に好きな教科は算数、好きなスポーツはテニスです。よろしくお願いします」


——パチパチパチパチパチパチパチパチ


野薔薇蓮央くんの自己紹介が終わり、教室が大きな拍手で包まれた。野薔薇蓮央くんは最後に礼をし、席に着く。


「野薔薇蓮央くん、ありがとうございます。はい、続いては出席番号順に自己紹介しましょう。秋山紗希さん、お願いします——」


「はい。私の名前は秋山紗希、好きな教科は——」


どんどん、自己紹介が続いていく。私は最後の方だから、まだまだだ。私は、他の子の自己紹介がちっとも頭の中に入らなかった。自分が何を言うのか、ものすごく迷っているからだ。私はきっと、野薔薇蓮央に本気で恋をした。だから、野薔薇蓮央くんに気に入ってもらえるような自己紹介にしたいんだ。


「はい、次は花咲梨華さん、お願いします。」


自己紹介を考えているうちに、もう私の番が来てしまった。私はドキドキしながら立ち、教卓の前に出て、口を開いた。


「私の名前は花咲梨華です。好きな教科は国語、好きなスポーツはバドミントンです。よろしくお願いします」


——パチパチパチパチパチ


やっと言い終わって、私は深呼吸をした。そして席まで歩いて、座った。私は自分の顔を今見れないけれど、今きっと顔は真っ赤だ。


(さっきのは野薔薇蓮央くんが見てたんだ!)


そう思うと、より顔が真っ赤になっていく気がしてくる。さっきの自己紹介で良かったのか。野薔薇蓮央くんは、私のことをどう思っているのか。今すぐ知りたかったけれど、野薔薇蓮央くんは超イケメン男子。こんな平凡な私と話したいわけがない。そう思うと残念だけど、これは事実だから少しは冷静になれた。また違うことを考えていると、あっという間に一時間目の授業も終わっていた。一日中野薔薇蓮央くんのことばかり考えていて、授業が頭に全然入ってこなかった。私は、改めて自分に苦笑した。何故苦笑したかって?それは、私が本気で野薔薇蓮央くんに恋をしていることに気がついたから。野薔薇蓮央くんに気に入られたいから。そのためには、少しでもおしゃれしないとな。明日は、少しおしゃれしていこう。あっという間に学校が終わった帰り道で、夕陽が道を照らしている。野薔薇蓮央くんの存在は、きっと私の中で太陽に違いない。野薔薇蓮央くんのために、私はもっと可愛くなる。昨日より、一昨日より、可愛くなっていくんだ——

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あなたに恋したのは私だった。 星尾月夜 @yyamaguchi

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