第18話 OK Congle、動画編集をしてっ!

「MV? 何のことだコン?」

 てんこちゃんが、首と頭の耳をかしげています。まつりちゃんの反応も同じです。

「ごめん、まだ二人には説明していなかった」

 わたしは二人に、それぞれの得意な分野を生かして、MV(ミュージックビデオ)を作ることを説明しました。

 さらにかなでちゃんにも、わたしの計画を改めて説明。ただ、小学一年生のときからの友達だから、わたしのやろうとしていたことは、もう大体理解していたみたい。

 かなでちゃんは落ち着いた声で、今からやるべきことを整理してくれます。

「つまり私は、てんこさんやまつりさんの【アヤカシの力】を借りて、音楽の編集をすればいいのね」

「うん。かなでちゃんならきっとできると思うし、それに二人の機材はすごいから、あっという間に完成するよ!」

 なんたって、高性能パソコンやタブレッドの10倍のスペックがあるんだから。

 音楽ソフトのことはよく分からないけど、きっと大丈夫なはず!

「ゆいかは、難しいことを簡単に言ってくる」

「ご、ごめん」

「でも、頑張ってみる。分からないことは、お父さんに聞いてみるから」

「よろしくね」

 これで、音楽を編集する人は確保したよ。あとは、残りの二人を説得するだけ。

 もちろん〈獣人〉の二人は、わたしの話を聞いて、猛反発していました。

「ボクは聞いていないコン! 化けタヌキ〈まつり〉と協力するなんて、一族の恥だコン!」

「アタシも聞いてないポコ! 化けキツネ〈てんこ〉と作業するなんて、末代の恥だポコ!」

「でもわたしは、二人には仲良くなってほしいし……」

 わたしの想いを聞いて、二人は互いに見つめ合い、黙ってしまいました。そして。

「た、たしかに、ゆいかちゃんがそう願っているなら、仲良くした方が良いコン……。それに……」

「ゆいちゃんと、その友人のかなちゃんが仲直りしたのに、アタシたちが喧嘩しているのは、少しおかしい気がするポコ……」

 二人とも、喧嘩が良くないことだと、きちんと分かっているみたい。

 わたしは、山で二つの種族に何があったかは分からないけど、でも、お互いにすごい才能を持っているんだよ。だから二人が協力したら、さらに良い物ができる気がするんだ。

 それに、てんこちゃんとまつりちゃんも、わたしやかなでちゃんみたいな、仲の良い友達になれると信じているよ!

「〈人間〉も〈獣人〉も、〈キツネ〉も〈タヌキ〉も関係なく、ここにいる四人ですごい物を作ろうよっ!」

 わたしは、てんこちゃんとまつりちゃん、それぞれの手を取り合い、真ん中で重ね合いました。わたしの想いは二人に通じます。

「ゆいかちゃんが、そういうなら、今回だけは協力してあげるコン……」

「ゆいちゃんが、そういうなら、今回は特別に参加してあげるポコ……」

「〈まつり〉は足を引っ張るなコン!」

「〈てんこ〉はヘマをしないポコね!」

「もう、二人とも素直じゃないなー」

 とりあえず、これで一安心だね。

 重なり合う三人の手。わたしは、空いているもう片方の手で、MV作りには欠かせない残りの一人を手招きします。

「かなでちゃんも、こっちに来て」

「ゆいかは、強引にことを進めすぎ」

 部屋の隅の方に立っていたかなでちゃんは、さらにぼそっと呟きます。

「ゆいかのそういうところ、嫌いじゃないけど」

「褒められている感じが、しないんですけどっ!」

 かなでちゃんの手も重なって、わたしたちは一つになりました。

 わたしは気合いを入れるために、叫びます。

「四人ですごいMV作るよ!」

「「「おー(コン)(ポコ)」」」

 そして、四人だけでの、MV作りが始動したのでした……。


       * * *


「ところでゆいか、動画編集は誰がするの?」

「あ……」

「私は、楽曲の編集しかできないよ」

「そ、それは……」

 あれ、そういえば、動画を編集する人のことをすっかり忘れていたよ!

「ゆいかちゃんが、ボクの【コンコンコンピューター】を使って、頑張ればいいコン!」

「わ、わたしにも、できるかな?」

「簡単な作業なら、ボクの【妖狐術】のアシスト機能が付いているコン!」

「よかったー」

 動画編集者、確保ー! わたしだけど……。

「でも、そのアシスト機能は、配信のサムネを作るぐらいの腕しかないコンだから、大体はゆいかちゃんの腕にかかっているコン!」

「ええっー!!! それじゃ意味がないよ!」

 さらに追い打ちをかけるように、残りの二人が応援してきます。

「ゆいか、頑張って!」

「ゆいちゃん、期待しているポコね!」

「そ、そんな……」

 わたしたちのMV作り、いきなりピンチ!? です……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る