第13話 緑コーナー、チャンピオン分福まつりー!(コラボ後編)
お絵かきコラボ対決開始から、数十分後。
「ううっ、まつりちゃん、強すぎるよ……!」
「ゆいちゃんが、弱すぎるんだポコ……」
対戦の内容は、出されたお題にそってイラストを描く方式。自分のタブレット端末にイラストを描いて、それを最新のAIが判定。得点の高い方が勝ち。すごくシンプル。
そして、わたしは現在10連敗中。イラストが上手いまつりちゃんに、全く勝てないよ。
当然、配信を観ているリスナーさんも面白くない展開。スポーツの試合で、一方的な内容を観せられているのと同じ。10-0の試合よりも、5-5の、ハラハラドキドキした試合の方を、みんなは観たいよね……。
【分福まつりと分福ゆいかのコラボ配信中のコメント】
:まつりちゃんが強すぎる
:ゆいかちゃん、がんばれー
:今回の配信、おもしろくないかも
うっ、否定的なコメントも混じっているよ。配信を観ていた人も、減り始めている気がする。どうしよう、このままだとコラボ失敗だよ……。
わたしが、焦っている中、どこからともなく、まつりちゃんの声が聞こえてきます。
『ゆいちゃん、焦らなくても大丈夫ポコね!』
『まつりちゃん!? もしかして、頭の中に話しかけているの?』
『そうポコよ!』
まつりちゃんの声を聞いて、わたしは、少しだけ落ち着くことができました。
『コラボ、盛り上げられなくて、ごめんなさい……』
『気にしていないポコよ! 配信で失敗はあるあるポコよ!』
『わたし、どうしたらいいかな? 上手くイラストが描ける気がしないよ……』
『なら、アタシがゆいちゃんに、アドバイスをあげるポコ!』
『ほ、本当にっ!?』
まつりちゃんのアドバイスを元に、まつりちゃんに勝って配信を盛り上げる。
あれ? これって、どっちにしても負けなんじゃ……。
で、でも、それで配信が盛り上がるのなら、仕方ないよね……!
『アドバイスをお願いしますっ!』
わたしは、わらにもすがる思いで、まつりちゃんのアドバイスを待ちます。しかし。
『アドバイスはずばり、描きたい物を、じっくり思い浮かべるポコね!』
『うんっ! 分かったよ……、ってそれだけ?』
『それだけポコよ!』
『ええっー!?』
もっとすごいアドバイスを期待していたのに。
『イラストの上手さは、その場では解決できないポコ。諦めるポコね』
『うっ、確かにそうだけど……』
『とにかく、想像力を働かせるポコ! そろそろ通信を切るポコ!』
『え、ちょっと待って……』
頭の中から、まつりちゃんの声が聞こえなくなったあと、すぐに次のお題が発表されます。お題は、動物の『キリン』でした。
わたしが考えていた展開と、全く違うよー。
アニメだと、ここからヒーローは復活して、大逆転する展開じゃないの!!!
と、とにかく、今はまつりちゃんのアドバイスを信じて、なんとかするしかないよね。
えーっと、お題は動物の『キリン』だったよね。
き、キリン……!? キリンってどんな動物だっけ。いきなりピンチじゃん!
とりあえず時間内に、頑張ってキリンのイラストを描いて提出。
わたしのキリンと、まつりちゃんのキリン、やっぱり差は歴然だよ。
向こうは本物のキリンそっくり。AIの判定はもちろん、まつりちゃんの勝ち。
「11勝目ポコー!」
「もう、勝てないよー」
そろそろ勝負は諦めて、コラボ配信は終わりにした方がいいかも。きっと、コメントは盛り上がっていないよ。
だけど、わたしの知らないところで、予想もつかないことが起きていたの。それは。
:ゆいかちゃんのイラストって独特だよね
:逆に才能があるね
:初めてキリンで笑ったかも!
あれ、わたしのイラスト、意外と受けているみたい……?
:これはこれでありだよ
:次のお題をはやく!
:ゆいか画伯の作品を早くみせて
ちょっとだけ、馬鹿にされている気がする……。むぅ……。
だけど、やっと配信が盛り上がり始めた気がするよ! さらに。
「これはアタシの配信だポコ! ゆいちゃんばかり褒められて、すごく悔しいポコ!」
なぜかまつりちゃんは、わたしのイラストに、対抗心を燃やしていました。
「さっさと、次のお題に行くポコ」
そして、お絵かきコラボ対決は、思わぬ方向へと行きます。
いかにお題にそって、笑えるイラストを描けるかどうかの対決になりました。
:ゆいかちゃんのイラストの勝ちだね!
:ゆいかちゃんの方が味がある
:まつりちゃんは上手すぎてだめだね
判定は『AI』ではなく、『リスナー』さん。
そして、わたしは連勝中です。
「むー、悔しいポコ! もう一戦やるポコ!」
「えー、まだやるの?」
「アタシが勝つまでやるポコ!」
むう……、わたし、真面目にイラストを描いているつもりなんだけど……。
でも、勝負には勝てているし、配信も盛り上がっているから、いいのかな……。
こうして、お絵かきコラボ対決は、最高の盛り上がりを見せたのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます