第27話 おまわりさーん。こいつでーす

・登場人物・

ヤマト……主人公。勇者。清掃業。

アメリア……女魔法使い。ゲロイン。魔法は火力だぜ!

バジョン……魔動車の運転手。整備もこなすエリート。

ジャウベ……憲兵A。巡査長。

ンゴニー……憲兵B。ヤバいやつの匂いがする。

オルトウ……憲兵C。

バラボン……憲兵D。小太り。

妖精……小さい。ピンク髪に見えるが、本当は透明らしい。


**********


 とりあえず妖精の体を洗い終え、持って来ていたタオルに身を包ませたのはいいのだが、馬車の裏から戻って来た俺を待っていたのは全員の冷たい目であった。


「とりあえずこちらの言葉は通じないようですね」


 バジョンが妖精を魔動車の後部座席に座らせ、何か国か語で話しかけているが、彼女は困惑した目を向けるだけでそれにこたえることは無かった。


 そして……。


「ゴメンて……」


 そう謝る俺に、妖精は先ほどの怯えた目ではなく、完全にケダモノでも見る様な目で睨みつけてきた。


「ま、まあ。彼女も多分、分かっているとは思いますよ。そう言う意図は無かったって」


 バジョンはそう言うが、あの目は俺を本気で軽蔑している目だと思う。


「おまわりさーん。こいつでーす! って痛てっああんっ!」


 俺は横から煽って来るアメリアの脇腹を、素早く三回小突く。

 やっぱり、明らかに肉がついている感触がある。


「ああーねー?」 


 そして、やり返そうとしてくるアメリアそれを、全て華麗に回避した。


 そのやり取りの後ろで、憲兵の四人が話し合っていたが、


「とりあえず暗くなる前に帰ろう。バラボン。とりあえず箱を馬車に乗せて」


 ジャウベが撤収作業の指示を出した。


 実際、相当な時間をロスしてしまったので、町に着くころには真っ暗になっているかもしれない。


「ヤマト団長や皆様は先に町に行っておいてください。我々はこのもいるのでゆっくり向かいます」


 ジャウベは妖精を気にしながらそう言っているが、


「問題なければこっちで運ぼうか? 魔力を封じれば安全に運べるし」


 俺はアメリアの反撃を避けながら、そう提案した。


 そしたら憲兵三人が顔を見合わせる。


「まあ、我々はそれでもいいのですが……」


 そう言って妖精の方をちらりと見る。


 妖精は特に暴れる様子は無いが、俺がそちらを見た瞬間、大げさに目線を逸らした。


「アメリア、ほら、お前一応女だろ。あれの相手してやれ」


 俺の相手に若干飽きて来た様子のアメリアを、妖精の元へけしかけようとする。

 するとアメリアは無言で妖精を眺めると、魔動車に飛び乗って素直に妖精の隣に腰掛けた。


 妖精はその行動に少し驚いていたが、特に逃げようと言ったような素振りは見せなかった。


「ではお言葉に甘えて、宜しくお願いします。じゃあお前ら急いで撤退だ。オルトウ、お前はそっちの馬車でヤマト団長に随行しろ」


 そう言って運び屋の馬車を指差す。


「バラボンとンゴニー。お前らは憲兵の馬車の荷台で犯罪者を見てろ」


「えぇ……またあのしんどい目にあわないといけないんすか?」


 ンゴニーがぼやく。


「お前は一番下っ端の癖に何言ってんだ? そもそも、こいつらを乗せてそんなに飛ばせないわ……」


 そういえばコイツら、ここに着いたとき謎に汗だくだったな。

 頑張って、暴れる馬車にしがみついてたんだろうか。


「では私達は先に町に行きましょう。ギリギリ門が閉まる前に着けるかもしれません」


 そう言われたので俺も魔動車に乗り込もうとしたが、それに気づいた妖精がものすごく嫌そうな顔をした。


「なああれどうするんだよ」


 アメリアが妖精を膝の上に載せながら俺にそう言った。


「ん? あれとは?」


 俺は見当がつかなかったため、アメリアに聞き返した。


「あれだよあれ」


 アメリアは窓の外を顎で指しながら言う。


 それでも良く分からなかったので、俺は足を掛けていた魔動車から一度降りて、その裏手に回り顎の方向を確認しに行く。


 そこにあったのは、汚れたアメリアの服だった。


「ほら、さっさとしろよ」


 殺意がわいたので、俺は本当に燃やしてやろうかと思ったが、この世界の服はとっても高いのだ。

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