第22話 お前太っただろ。胸以外
・登場人物・
ヤマト……主人公。勇者。目つきが悪い。
アメリア……女魔法使い。ゲロイン。魔法は火力だぜ!
バジョン……魔動車の運転手。整備もこなすエリート。
**********
まさか三日連続で人間の吐瀉物を拝むことになるとは思わなかった。
それにしてもうちのパーティーメンバーは、失禁したり脱糞したりゲロ吐いたり、本当にこんなのが勇者パーティーでいいのだろうか。
「これ早く掃除しないと臭いが大変なことになるぞ」
とりあえず、道のちょっと広めの所に魔動車を留めて、それに塗れた後部座席を見ながら俺はため息を吐く。
本当にあのちんちくりんのアメリアから出たのか疑問になる惨状だ。
「ちょっとまってください……魔導力の完全遮断方法が分からなくて……」
そう言うバジョンの声は気の毒になるくらい消沈している。
「…………着替える」
そして当の本人は道の端で胡座をかいてうつ向き、言うだけ言って動こうとしない。
俺は何度目か分からないため息をつき、とりあえずバジョンに車トランクを開けてもらってアメリアのトランクを引き出す。
「今なら人が来てないからとっとと服を脱げ」
俺がそう言うと、アメリアはのっそりと立ち上がり、ダラダラと服を脱ぎ始めた。
「そのまま後ろ向いとけ」
下着姿になったアメリアに声をかけると、俺は洗浄魔法を構える。
「パンツもなんか濡れてる……」
ボソリとアメリアが呟く。
めんどくせぇ……。
「もう、いいからそのままT字ポーズとって。少し足開いて」
黙って素直にポーズを取るアメリア。
開けた大地にほぼ全裸の女が、なんとも間抜けな光景である。
「いくぞ」
「…………」
返事はない。
俺は洗浄の魔法でアメリアの首から下を包み込む。
そしてそれをぐにぐに動かして、アメリアの体を洗っていく。
それにしても年頃の女が素っ裸で目の前に突っ立っているのに、一切の欲情をそそらないのは、コイツを俺が女として見ていないだけなのか、はたまた単に色気が無いだけなのか……。
「……あんままさぐるなよ」
しかも、すぐこういうことを言う。
「お前太っただろ。胸以外」
俺の言った事は事実で、くびれが減ったせいで本当に幼児体型に近づいている。
その点、パレッタとパァスは引き締まったいい体をしていた。
まあ、胸はお察しだったが。
「……あのさお前いっつもあたしのこと貧乳扱いしてるけど別に言うほど小さくないからな?」
ふーん。
「じゃあえーと、スリーサイズは上から――」
「……すぞ」
泣いたカラスがもうキレている。
「冗談はおいといて、マジでちょっと運動しろ。いざという時に動けないと命に係わるぞ」
「お前に言われんでもわかっとるわ」
そんなやり取りをしながら、俺はアメリアを洗い進め、そして間もなく洗い終わった。
「じゃあ後は自分でやれよ? もう気分も直っただろ」
そう言って、アメリア汁のしみ込んだ魔法を大地に返す。
「シミになった……最悪……」
ありがとうの一言も無いのかこのガキは……。
「ヤマトさん? ちょっとこっちにって……え!? ちょ、ちょっとなんて格好してるんですか!?」
車の陰から俺を呼ぼうとしたバジョンが、慌てて顔を覆う。
? ……あ、しまったアメリアの事か。
当たり前のこと過ぎて完全に感覚が麻痺していた。
一応、先に言っとくべきだったと反省した。
そして当のアメリアは何事も無かったように、いそいそと着替えを進めている。
その様子を見て俺は、
「アメリアお前さ。もう…………いや、なんでもねーや」
言いかけた言葉を飲み込んで、俺はバジョンの元へと向かおうとすると、
「誰かさん達のせいで、その辺はもうとっくに克服したよ」
俺の背中に向けて、珍しく落ち着いた声色でアメリアがそう言った。
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