第5話 雪の降る日

人は死んだら雪になる。


教室の窓から外を眺めていると、雪が降り始めた。


死んだ人の肉体が残らなくなってから、葬式も墓もなくなった。

代わりに雪の降る日は特別な意味を持つようになった。


かつては、雪で人形を作ったり、丸めて投げる遊びが流行っていたらしい。

今では誰もしない。


雪が降り始めると、人々は黙って雪を見つめる。






校庭のグラウンドが白く染まっていく。


降り積もる雪に思い出が重なる。


道行く人は歩みを止める。


「今」が過ぎ去った時間に染まっていく。





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