第4話 死への執着も溶けて消えてゆく

人は死んだら雪になる。


自ら死を選んだ人も、誰かから死を与えられた人も、病で苦しんだ人も、不慮の事故にあった人も。誰もが雪になって消えてゆく。


自殺、他殺、病死、事故死。死の境界線はあいまいになった。

そして死と行方不明の違いも。


死のカテゴリがあやふやになった。死へのハードルが低くなった。

死がより身近で、自然なものになったことで、人は死に執着しなくなった。

死によって何かを解決しようとしなくなった。


死に重大な意味を見出さなくなったことで、死によって責任を取ろうとする考え方も減っていった。


死にたくなるほど辛いことがあったら、雪だけ置いて、どこか遠くへ逃げればいい。


死体が残らなくなったことで、気軽に無責任になれるようになった。これは、ある意味では救いなのかもしれない。













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