第3話 雪は雪
人は死んだら雪になる。
人が死んで雪になる現象が発見された当初は誰も信じていなかった。
快楽殺人犯が一癖変わった満足感を得るだけのために、雪を置いて行ったのだと思われていた。そしてそれを見た別の殺人鬼が真似ることで全国的に広まったのだと。
しかし、実際に医療機関や学術機関の監修のもと、人が死んで雪になることがついに確かめられた。この世界を揺るがす衝撃的な変化もやがて、時間経過とともに受け入れられるようになった。
その雪は、自然現象で発生した雪と物質的には何一つ変わらないことも確かめられた。いまだに科学的な説明を試みようと日夜研究している科学者もいるが、成果は出ていない。
あるとき頭のネジがはずれた男が、人が死んだあとの雪を食べた、という事件がニュースになった。男の体調には何ら変化はなかった。
男は一言「冷たかった」とだけ感想を述べた。取り締まる法律もなかったので、男は罪に問われなかった。
人の死を取りまく様々な感情が、時の流れとともに、溶けて、蒸発し、消えてゆく。
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