第44話 決着
ウルは俺の勝負に乗り、俺と同じように右拳を引いて駆け出してくる。
(乗ってきた!)
俺とウルでは状況が違う。
ウルは1人、だがこっちは
「【拘束釘弾】」
「!?」
ウルの背後15メートル、瓦礫に乗った一色さんが楔を放つ。
ウルは一瞬驚くも、すぐに一色さんを無視し、俺に向かってくる。
ウルは自分を弾き飛ばすことで楔を一瞬で崩すことができる。【拘束釘弾】は喰らったところで痛くない。それに、【拘束釘弾】はギリギリ俺とウルの衝突前には間に合わない――!!
俺とウルの右拳が衝突する。
「うおおおおおおおおおおおおらぁ!!!」
俺は足に渾身の力を入れ、吹き飛ばしを堪える。
「無駄です! 踏ん張ってどうにかなるものでは――」
その通り。ただの時間稼ぎに過ぎない。俺は間もなく吹っ飛ばされるだろう。
ザクザクザク。と黒い楔が刺さる。
ウルにではない、俺にだ。
「……そういう手ですか!!」
【拘束釘弾】により俺の体の座標を固定。吹き飛ばしの衝撃で楔は全て弾けるも、吹き飛ばしに耐えることに成功する。
「ですが、耐えた所で――」
その時、
俺の義手の拳で、魔法陣が輝いた。
「これは……!?」
「【印爆雷】だよ。義手の拳に仕込んでおいたんだ」
「馬鹿な! 詠唱は――」
ウルはハッとする。
「あの時か!!」
そう、俺は先ほど【印爆雷】の詠唱をしていた。
――『無茶しやがるな……! 【印爆雷】が発動してから起爆するまでの間にもう1度飛ぶなんてよ……』
あの言葉を発すると同時に、【印爆雷】を発動。義手に仕込んでいた。
だが普通に拳と拳を合わせたんじゃ【印爆雷】が炸裂する前に俺が飛んでしまう。だから一色さんに【拘束釘弾】を打ってもらった。
一色さんは俺に対して【伝機】を飛ばしていたから、ウルに見えない位置で【蒼炎】を無詠唱で発動し、炎で文章を送って指示を飛ばした。
全部、計算通りだ。
「ぶっ飛べ!!」
「くっ!?」
【印爆雷】が発動し、俺とウルは爆撃の衝撃で互いに吹っ飛ぶ。両者共に倒れ込み、そして、
「【拘束釘弾】」
再び放たれた12本の楔によってウルは仰向けのまま完全に拘束される。
一色さんがウルへ追撃を仕掛けようと駆け出した時だった。
「……降参です。負けましたよ」
ウルは敗北を認めたのだった。
---
ギルドデュエルが終わり、保護エリアに結集した俺達。
選手で意識があるのは俺と一色さんとウルのみ。美亜は一色さんの攻撃で気を失い、凛空と飯塚は治療を受けている途中で眠ってしまったそうだ。
「それでは此度のギルドデュエルの勝者はオッドキャットとさせていただきます。契約通り、フェンリルのギルドポイント1500をオッドキャットに移行。さらに如月小雪の籍をフェンリルよりオッドキャットに移籍させ、如月小雪と飯塚敦の間にあったパートナー契約と借金を解消します」
よし。色々あったが、これで如月は解放される。
俺はアビスの側に行く。するとアビスは微笑みながら、
「お疲れ様」
「アビス……ちょっと聞きたいことがあるんだが」
アビスは俺の耳元に口を寄せ、
「……わかってる。オリジンの暴走についてだろう?」
「……ああ」
「……ギルド協会員の前でそれ関連の話はできない。ギルド本部に戻ってから話をしよう――」
「何をコソコソ話しているんです」
一色さんが険しい顔で割り込んでくる。
「別に。ただの世間話だよ。そう嫉妬しないでよ」
「嫉妬なんか……」
一色さんはアビスを様付けで呼ぶくらいだ。アビスにかなり心酔しているのだろう。そのアビスと体を寄せて話していた俺に嫉妬したわけか。
一色さんの前じゃあまりアビスと仲良くしない方が良さそうだ。
「異議申し立て無ければ、ギルドデュエルはこれにて終幕とします」
唯一フェンリルでこの場にいるウルは笑みを浮かべたまま、
「異議は無いです。こちらの完敗ですので、全ての要求を受け入れます」
「君が決めていいのかい?」
アビスがウルに問う。
「はい。飯塚氏、成瀬氏が共に意識が無い場合、このギルドデュエルの件に限りギルドマスター代理として動くことを許可されています。何なら飯塚氏のサインがある書類を見せますよ」
「大丈夫。信じるよ」
アビスとウルは微笑みながら黒い邪気をぶつけ合う。アイツら似た者同士かもな。
「ではギルドデュエルは終幕。解散とします」
ウルはこちらに笑いかけた後、グローブで自分に触れ、どこかへ飛んでいった。
「……アイツについても本部で話したい」
「そうだね。彼は色々と引っかかる。だけど葉村君、怪我の治療が済んだらまず君には彼女を迎えに行って欲しいんだ」
「彼女?」
「如月ちゃんだよ」
「如月を迎えに行くのは構わないけど、アイツ今どこにいるんだ? 家だとしたら俺、アイツの家の住所知らないから迎えに行くの無理だぞ」
「彼女は第一病院に居るよ」
「まだ傷、治ってないのか?」
「体はもう回復しているけど、念のため入院して貰っているんだ。外に出して飯塚にしっちゃかめっちゃかにされても困るし」
利口な判断だ。
「まだこの結果も伝わってないだろう。もし可能なら今日中にオッドキャットにつれてきて欲しい。大事な話がある」
「わかった。全部伝えて、オッドキャットに連れてくるよ」
「うん。頼むよ」
――――――――――
【あとがき】
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『続きが気になる!』
と少しでも思われましたら、ページ下部にある『★で称える』より★を頂けると嬉しいです!
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何卒、拙い作家ですがよろしくお願いします!
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