第43話 暴走
――廃墟地・保護エリア。
その上空には【探機】から送られてきた映像が映っている。
(あ、まずいな)
アビスは葉村の腕の不調を見て、その笑みを固まらせた。
(“
アビスは「ふむ」と腰に手を当て考える。
(今は卵にヒビが入っているような状態……)
人で言うならば、赤ん坊が内側から腹を蹴っているようなモノ。
(赤眼のミノタウロスとの戦い、僕との手合わせ、そしてあのウルというA級上位相当のシーカーとの戦い……短時間で経験値を与えすぎたかな。本来なら喜ぶべきことだけど、このギルド協会員が見ている中でオリジンが暴れるのはまずい)
いざとなれば、デュエルが滅茶苦茶になることを承知の上で、この場にいる全員の意識を絶たねばならない。
(何とか抑えてくれよ……葉村君)
---
俺は左手で義手を掴み、うずくまる。
「く、そ……!」
物凄いパワーを感じる……!
どうにかしてこのパワーを発散しないと、俺が壊される!!
「何をしているんです?」
ウルはまたポーチから弾丸を掴んで、空中にばら撒く。
「私を相手に、遊んでいる暇があるのですか」
「ま、待て!」
「待つわけないでしょう」
オーパーツによって、放たれる9発の弾丸。
その全てを――義手が勝手に動き、掴み取った。
「は?」
「う、腕が勝手に……!?」
義手は手を開き、ペシャンコになった弾丸10発を地面に落とす。
――轟ッ!!!
義手が、勝手に前に進む。義手に釣られる形で体が走り出す。
その速度はウルの高速移動をも超える――
「早いっ!!?」
「があああああああああああああっっっ!!!!」
義手は勝手に拳を引き、ウルの腹に拳をめり込ませた。
「ごはっ!!!!?」
骨が折れる音と臓器が潰れる音が響く。
血を吐き、ウルは廃墟の3階まで吹っ飛んだ。
「落ち着け!! やめろ!!!」
さらにウルを追撃しようと暴れる義手を、俺はうずくまって必死に抑える。
このままじゃ……この義手は、ウルを殺す……! 確実に!!
「テメェ……!」
ふざけるな。助けて貰って俺が喜ぶと思っているのか?
俺にだってアイツを倒す算段があったんだ。それを滅茶苦茶にしやがって!!
(【風巻】!!)
風の魔法で見張りの【探機】を飛ばす。そして、
「俺の言うことを――聞きやがれぇぇぇぇ!!!!」
俺は義手を地面に叩きつける。
すると、隕石でも降ってきたかのように地面に
「手間取らせやがって……!」
――ゴォン!
と、目の前の廃墟が揺れた。
「なっ……!?」
廃墟が、俺に向かって倒れてくる……!?
「まさかアイツ!!」
廃墟をオーパーツで吹っ飛ばしたのか!?
「【飛燕爆葬】!!」
俺は倒れてくる廃墟に爆炎をぶつけ破壊。しかし今度は瓦礫が降り注いでくる。
「【光点軌盾】!」
瓦礫を光の盾で防ぐ。その瓦礫の隙間――微かに人影が移動したのを見つける。
「【印爆雷】!」
俺は地面を指さし、罠魔法の【印爆雷】を背後2メートルの所に仕掛ける。俺の目測が正しければ、ここが奴の着地点!
カチ。
と、自分を投げ飛ばし高速移動してきたウルが【印爆雷】を踏んだ。【印爆雷】も【印加重】と同じで触れることで起動し、触れた相手を爆撃する。――のだが、ウルは【印爆雷】が起爆する前にまたグローブで自分に触れ加速、俺に体当たりしてきた。
「つぅ!?」
「くっ!!?」
俺とウルは地面を転がり、立ち上がってすぐに距離を取る。
「無茶しやがるな……! 【印爆雷】が発動してから起爆するまでの間にもう1度飛ぶなんてよ……」
「爆撃を避けるためにはああするしかありませんでしたから。しかし、驚きました。まさかこの私が、気絶寸前まで追い込まれるとはね……先ほどの1撃、素直に称賛しますよ」
ウルは唇から血を零し、猫背で、立っているのも辛そうだ。
俺は俺で限界が近い。ウルから攻撃を受けすぎたし、さっきの腕の暴走のせいか体が気怠い。
【幻影自在陣】でウルを倒し切るつもりだったが、もう体力がない。――仕方ない。
「ウル。最後は潔く、拳で決めようじゃねぇか」
「正気ですか? さっきハッキリと優劣を決めて差し上げたでしょう」
「さあってなぁ!!!」
俺は真っすぐ、ウルに向かって走る。
最後の勝負だ……!
――――――――――
【あとがき】
『面白い!』
『続きが気になる!』
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何卒、拙い作家ですがよろしくお願いします!
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