第28話 すみません
結局、一切会話が
エレベーターで2人きり。気まずい空気が流れる。
やばいな。これで数原さんまで無口なタイプだったら物凄くやりにくいぞ。
「……廃墟地の再現か」
1階で降りると、廃墟が並ぶ廃れた街が広がっていた。
トレーニングエリアは自由に中の空間をいじることができる。前回は砂漠だったけど、今回はギルドデュエルの設定に合わせて廃墟地にしているようだ。
「……」
「えーっと、一色さん、数原さんってどんな方なんですか?」
「……野蛮。キライ」
「そうですか……」
はい、このチーム気まずいの確定。
「おうおうおうおう! 随分な言い草じゃねぇか冴!」
廃墟の屋上に人影。人影は屋上から飛び降りる。
ドォン! と目の前に着地。廃墟は4階建てだ、人間が飛び降りて無事なはずないんだが……その男はピンピンしていた。
「テメェが葉村志吹だな!」
リーゼント。グラサン。高身長、筋肉質。そんで服装はライダースーツ。
もう見るからに暴走タイプな人だ。
「まさか、あなたが数原凛空さん?」
顔写真だとロン毛で、顔がよく見えなかったけど、アレはリーゼントを崩した姿だったのか。
「おうよ。よろしくな――と言いたい所だが」
数原さんは俺に詰め寄ってくる。
「俺はテメェが気に入らねぇ!!」
ハッキリとそう言って、睨んでくる。
一色さんと正反対で声がデカい。
「アビスの口利きで試験も無しに入ってきて、いつの間にかウチの至宝であるオリジンを貰ってよぉ」
オリジン……この義手のこと、この人知っているのか。平然な顔で今の発言を聞き流している辺り、一色さんも知っているみたいだな。
「挙句の果てにお前のお友達のためにギルドデュエルだぁ? しかもこっちはサポーターのみぃ? ふざけんな!」
なんだ、この人意外と……。
「なんでテメェのために俺達が右往左往しなくちゃならねぇんだ! このギルドデュエル、こっちが大きなハンデを背負っているとはいえ、負けたら看板に大きな傷を
なるほど。言い分はわかった。
俺は1歩離れ、そして、
「数原さん……あなたの今の言い分……全部まるっとその通りです」
頭を下げる。
「全部俺が悪いです。事実、いま言われるまであなた方の負担や迷惑を見失っていました。反省します」
この人が言っていることは至極まともだ。
確かに俺は如月を救う事とか、自分のこと、飯塚達を負かすことばかり考えていて、オッドキャットの他の人達からの見え方とかを意識していなかった。
ぽっと出の俺が原因でギルドデュエルが起きている現状を、オッドキャットの人達が快く思うはずがないよな。素直に反省。一色さんが俺に冷たく当たっていたのも合点がいった。
「お、おおう……素直だな。わかりゃいいんだよ。ま、始まったモンはもう仕方がねぇ。それはそれ。反省したなら気を取り直して、勝つための算段立てっぞ」
数原さんは必要以上には責めてこない。やっぱり、見た目に反してまともな人だ。
「はい。よろしくお願いします」
俺は頭を上げ、話を進める。
「聞いていると思いますが、今回はサポーターだけでシーカーに勝たないとなりません。バトル方式は廃墟地での3対3……チーム戦になります」
「サポーターだけでシーカーに勝つためには連携が必須だな。正直どうなんだ? お前んとこのギルドの上位3人の実力的に、勝率はどんなもんだ?」
俺は包み隠さず、正直に言う。
「100です」
「はぁ?」
「100%勝てます」
正直なところ、負ける要素が無い。
「正気かテメェ。あっちはA級がいるんだろ?」
「はい、3人中2人はA級かと。でも問題はありません。相手が出してくるのは飯塚敦と成瀬美亜、後はB級の誰かです。最後の1人は不確定要素になりますが、飯塚と成瀬についてはある程度実力を把握できています。飯塚はA級の中で下位程度の実力、成瀬にいたってはよくてB級中位。俺達なら……勝てます。確実に」
相手の手の内は知り尽くしている。対策はいくらでも立てられる。
それでいて飯塚も美亜も俺の手の内を知らないし、知ろうともしていない。たとえこっちを研究してきたとしても、どうしても俺のオーパーツの情報は抜けるだろうしな。
魔物ではなくシーカーが相手だから魔法も有効。俺達は3人共単体でB級シーカーぐらいなら相手にできる実力を持っている……と思う。まだ2人の実力は未知数な部分はあるが、魔法のラインナップ的に戦えるはずだ。
きちんと対策し、適切に連携すればまず負けることはない。
「口で言うのは簡単です」
一色さんが冷たい目で見てくる。
数原さんは真逆に目を熱く輝かせる。
「はっ! 面白れぇじゃねぇか。まだ俺と冴の実力も知らないのに、それだけ言えるってことは自分の力に自信があるってことだろ?」
「はい」
下手に謙遜はしない。時間の無駄だ。
フェンリルの誰とも1対1なら勝てる。
「いいぜ新入り……自信家は嫌いじゃねぇ。ならその実力とやら、直接見せてもらおうじゃねぇか」
数原さんは拳を握り、前に出す。
「……いいですね。やっぱり手合わせがお互いの戦闘スタイルを測る手っ取り早い方法だ」
「その通りだ」
「でも、ちょっと公平ではないですね。俺はオーパーツを持っている」
「アビスの話だとまだそのオーパーツは退魔属性を持っているだけで他に特殊な能力はないんだろ? 俺達からしたらただの硬い義手だ」
「馬鹿にできないレベルの身体補助効果もあります」
「ん? あ、そっか。それがあったか」
「今のところこの補助効果を上手く調整できなくて、戦いになると抑えることはできません」
日常生活ではなんとか調整できるんだがな。戦闘時はストッパーを掛ける余裕がない。俺と戦った時のアビスのようにはできない。
「だからハンデとして――そちらは2人でいいです。2対1でやりましょう」
――――――――――
【あとがき】
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何卒、拙い作家ですがよろしくお願いします!
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