第13話 最強(?)コンビ
50階~65階は洞窟フィールド。
鍾乳洞だったり火山洞だったり形は様々だが、迷路のように複雑な道で周囲が壁で囲まれていることは共通。まさに迷宮らしいフィールド。
迷宮は毎週日曜の24時に1~7階を除く全階層が“再構築”されるため、先週までの攻略者が作った地図などはあてにならない。ゆえに、“再構築”のすぐ後のこの辺りの階層は本当に迷う。
幸か不幸か今日は日曜日。この一週間でここいらの階層はマッピングされているため、迷わず進める。
「50階から60階までは地図がある。転移ゲートの場所もわかっているから速度を緩めずに行くよ」
アビスが先行する。俺はアビスの後をついていく。
「葉村君、言い忘れていたんだが、飯塚敦と如月小雪を襲った魔物は……赤眼黒肌のミノタウロスだったそうだ」
赤眼……!?
「嘘だろ……!」
赤眼のミノタウロス……まさか、俺の腕を奪ったのと同じ個体か!?
「どうかしたかい?」
「俺のこの右腕を半年前に喰ったのも、赤眼黒肌のミノタウロスだった。階層は60だったか」
「ふむ。魔物が階層を移動することもあるから、同一個体である可能性は高いな」
だとしたらヤバい。
正直、アレの強さは60階層付近の強さじゃ無かった。間違いなく上層レベル、A級シーカーでも手に余る相手だ。
そんな相手に1サポーター何分も持つはずが……。
「少し速度上げるよ」
「ああ! 頼む!」
そういや、俺、普通にアビスの速度についていけているな。アビスは今、オーパーツの恩恵を受けているはず……オーパーツを持たない俺じゃ、彼女の速度についていけるはずがないのに……。
しかも俺はバックパック(迷宮用リュック。中の空間が拡張されており、リュックほどの大きさで車ぐらいまでの容量が入るが荷物の重さはちゃんと蓄積される)を背負っているんだぞ。
「葉村君! 看――」
俺は無詠唱で看破を発動させ、足跡を輝かせる。足跡が途絶えている場所を浮き彫りにする。
「【光点軌盾】」
光の壁で途切れた道に足場を作る。
【消気】を発動させ俺とアビスの気配を薄くし、
【探機】(蜂の形をした偵察召喚獣を出す魔法)を発動させ、蜂の召喚獣を1体出し背後を警戒させる。
暗くなってきたら【蒼炎】で灯りを確保。
【望遠】で先を見て、雑魚敵がいたら【突竜鎖】で捕縛。
毒沼は消毒クリスタルで毒無効状態となり突っ切る。
ゾンビが多いエリアに来たら聖水を撒く。
無駄なく、最善で、最短の動きをする。
「なにかオーダーがあったら好きに言ってくれ」
アビスは嬉しそうな顔をする。
「前言撤回だ、葉村君」
「ん?」
「君となら20分もかからない。10分で62階まで行ける」
アビスはオーパーツである銃を左足のホルダーから抜き、右手に装備。
迫ってきていた飛行系魔物達に向けて黒い弾丸を放つ。弾丸をぶつけられた魔物達は空から落ち、地に這いつくばる。
「罪と罰の罪か……!」
「やっぱり知ってるよね」
アビスは地に落ちた魔物達を剣――“罰”で斬り裂いていく。
中層の魔物達が片手間に倒されていく。
アビスのオーパーツの銃は“罪”という名を持ち、黒い弾丸を浴びせた相手の体重を増やす。
そして刀の形をしたオーパーツ“罰”は、対象が重いほど切れ味・威力を増すという特性を持つ。
罪で相手の体重を増やし、罰で仕留める。2器1組のオーパーツ罪と罰……わかっちゃいたが強力だな。
「相手の体重を増やす罪の弾丸、相手が重い程威力を増す罰の斬撃……凶悪なコンビだぜ。まったく」
「有名になるのも考えモノだね。手の内が全部バレバレだ」
「バレてても問題ないだろ。対策のしようがないよ、そのオーパーツ」
俺も負けてられない。
「索敵と視界の確保は任せろ」
「了解。背後の警戒は――」
「【探機】に任せている。【看破】を3秒毎に使っているから罠の感知もOKだ」
「……わかった。MAPは――」
「頭に入っている。誘導も任せてくれ」
「じゃあ僕は救助隊と連携を――」
「救助隊にはもう連絡した。障害となる魔物を予め排除してくれるそうだ」
アビスはなぜか、プクーっと不満そうに頬を膨らませた。
「やれやれ、少しは僕にも役目を分けて欲しいものだね」
「お前は魔物を蹴散らしてくれれば十分だよ」
避けては通れない魔物はアビスが瞬殺してくれる。
本当に、ビックリするぐらい高速で迷宮を踏破できる。この階層の最速攻略タイム出てるんじゃないかコレ?
――――――――――
【あとがき】
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