第11話 行方不明
翌日。
アビスとは連絡先を交換していたので、アビスに連絡してギルドを変更すると伝えた。アビスは嬉しそうな声で『ありがとう』と言ってくれた。
それからアビスとオッドキャットの2階研究室にて待ち合わせをした。
研究室に行くとアビスはユンさんと話しており、俺が姿を見せると話を止めて近づいてきた。
「おはよう。僕のギルドへの入団、決めてくれて嬉しいよ。これからよろしくね」
手を出してくるアビス。
「こちらこそ、よろしく頼むよ。マスター」
アビスの手を握り、握手をする。
「マスターはやめてくれ。これまで通りアビスでいい」
「わかった」
「今日は書類手続きと義手の装着をするよ」
「義手? もう調整は終わったのか?」
ユンさんが手でVサインを作る。
「余裕だ。手続きが終わったら奥の手術室に来い」
「は、はい!」
義手……右腕が、手に入る……!
「じゃ、まずはこの手術同意書とギルド入団希望書を記入してもらうよ」
「了解」
書類をパパっと記入し、アビスに渡す。
「OK。これで受理手続きすればギルドの変更は終わりだ」
「こっちにおいで。志吹坊や」
「はい」
「あ、その前に、貴重品は僕が預かっておくよ」
貴重品を他人に預けるのは気が引けるが、S級シーカーが金盗んだりするとは思えないし大丈夫だろう。
「さんきゅ」
俺は財布とスマホをアビスに預けた。
ユンさんについていき、手術室に入る。
助手と思しき白衣の人が数人、手術室にいた。
「上半身裸になって台に横になりな」
「はい」
上裸になり、手術台に寝そべる。
それから麻酔を打たれ、視界が淀み、気づいた時には何も見えず、何も聞こえなくなっていた。
---
「終わったよ」
ユンさんの声で目を覚ます。
――重い。
片腕が無いことに慣れていたから、右腕が重りのように感じた。
右腕――義手を上げて、グーパーする。
感覚がある。動かせる……!
体を起こし、手術室にある鏡で全身を見る。
機械の右腕を装着した自分の姿がある。
カッコいいけど、やっぱり違和感が凄いな。
「どうだい? 新しい腕の感触は」
「良いです。全然器用に動かせるし、動きが速いし力強い」
「流石は私。完璧なオペだ」
「……」
「どうした坊や。私の顔をジッと見て。惚れたとて無駄だぞ。私は12歳以上の男に興味はない」
軽くショタコンであることをカミングしたことはともかく、俺が気になっていたのはユンさんが咥えている紙タバコだ。
義手を装備した喜びですっかりスルーしていたが、この人、俺が目覚めた時にはタバコを咥えていた。それもすでに吸い終わり間近のやつだ。
「もしかしてですけど、オペ中タバコ吸ってました?」
「まぁな」
否定も謝罪もしない。堂々とした立ち姿。吸い殻でも腕に入ってたらどうするんだまったく。
「やぁ、終わったかい?」
アビスがオペ室に入ってくる。
「お! 立派な腕だね~」
「ありがとうアビス、それにユンさんと助手の皆さん。これで……俺はもっと強くなれる」
「それは嬉しいと同時に恐ろしいね」
言うまでもないが、右腕があると無いとでは全然違う。文字通り手数が倍だ。手から放つ魔法も多くあるから、これからは魔法の同時発動や連続発動が容易になる。
迷宮攻略もグッとやりやすくなる。
「そうだ。君の手術中に君のスマホに何か連絡が入っていたよ」
「連絡?」
「パスワード入れないと見れないから見てないけど」
美亜かな? だとしたら憂鬱だ。
俺はスマホを受け取り、来た連絡を見る。どうやらメールだ。メールの内容は……、
「!?」
メアドは昨日如月から貰ったモノと一致する。
メールにはこう書かれていた。
《たすけて62》
明らかにただ事ではない。
「アビス……これを見てくれ」
「ん~、どれどれ」
アビスは如月から送られてきたメール文を見て、微笑みを解いた。
「メールの相手は?」
「如月小雪。フェンリルのギルドマスター、飯塚敦のサポーターだ」
「OK。僕は迷宮の行方不明者リストを当たってみる。君はメールを返すんだ」
「わかった」
如月に対し、俺が送ったメールはこうだ。
《何があった? 番号を載せるから連絡くれ》
文の下に電話番号を載せた。電話がかかってくればいいんだが、
「大変だ葉村君」
そのアビスの言葉で、ひんやりとした何かが背筋を撫でた。
恐らく――嫌な予感というやつだ。
「アマツガハラの行方不明者リストの中に、如月小雪、飯塚敦。両名の名前があった。彼らは2時間前、18時に救難クリスタルを発動した後、消息を絶っている」
――――――――――
【あとがき】
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『続きが気になる!』
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何卒、拙い作家ですがよろしくお願いします!
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