第2話 A級(笑)シーカーとS級サポーター
「おでましですね」
落とし穴を回避し数分で、斧を持った牛人ミノタウロスが現れる。
「ガアアアアッ!!」
「まったく、下品な顔ですこと」
その巨体と迫力に美亜は一切怯まない。
美亜は腰に差した騎士剣を抜く。
「この階層では最も強大な敵ですが、私の相手ではございません」
――雷剣“イナヅチ”。
効果は単純、雷を操る剣だ。
突きを出せば直線に雷が飛び、薙げばソードビームが如く雷が発射される。
そして何より、イナヅチは
オーパーツは選ばれし者にのみ使える武器。シーカーにとっては必須で、俺が持ちえない才能だ。
アレが無いとモンスターに有効打は与えられない。天地がひっくり返っても、アレが無いとシーカーには……なれない。
「【
俺は手から鎖を出す魔法を発動。ミノタウロスに鎖を巻き付け、鎖を引っ張り縛り上げる。
「フオオオオオオオオオオオッッ!!」
ミノタウロスは暴れて鎖を解こうとするが、無駄だ。俺のパワーの方が上。
魔力を闘力に変換し、体に循環させ肉体を強化する“強化術”で俺の身体能力は底上げされている。
美亜は隙だらけのミノタウロスに雷撃を浴びせ、焼き尽くす。ミノタウロスが消えた後に出てきた魔石を手に取ると、俺に向かって投げる。『バッグに入れとけ』ってことだろう。他にもミノタウロスの角がドロップしていたので拾っておく。
「はい、おしまい」
それからも探索は滞りなく進み、
「52階に続く転移ゲートでーす」
目の前には赤く歪んだ空間。次元の裂け目、とでも言うのか。これが転移ゲート、上の階へ繋がる扉である。このゲートに飛び込むと上の階へ転移する。
「今日の配信はここまで! チャンネル登録よろしくお願いしまーす!」
こうして配信が終わる。
さてさて、ここからがまた面倒だ。
「ここ湿気やっば! あっついなぁ! ドリンク! 早く!」
「ああ」
バッグからペットボトルの水を取り出し、美亜に渡す。
「タオル」
「はい」
「転移クリスタルの準備、早くして!」
転移クリスタルは魔力を込めることで迷宮を脱出できるアイテムだ。
「……言われなくてもわかってるって」
俺がちょっと強めの言葉遣いをすると、美亜はきつく睨んできた。
「なにその態度? アンタ、自分がどれだけ恵まれているかわかってる!?」
「……」
始まった。いつもの
「右腕のない、無能で1人じゃ何もできないアンタを、幼馴染の縁だからって私が面倒見てあげていること、忘れてないでしょうねっ!」
右腕側、だらーんと伸びた袖を左手で握る。
俺には右腕がない。俺には彼女のように1人で魔物を倒す力がない。まさに無能……言い返せない。
「アンタなんか本来C級だってパートナーにしたがらないわよ。A級の私と組めていることがどれだけ幸福なことかわかってる? ねぇ!」
「……助かってるよ。おかげで俺は人並みの収入を手に入れられているからな」
「わかってるならいいのよ。復唱しなさい! 『僕は1人じゃ何もできません。美亜さんにはいつも助けられています』。――はい!」
屈辱だ。
でも、ここで逆らえば俺は……路頭に迷うことになる。
逆らえない。
「ぼ、僕は1人じゃ何もできません……美亜さんにはいつも助られています」
「よろしい」
俺は唇を噛み、転移クリスタルを2個用意する。
転移クリスタル高いんだよな……美亜の分も俺が買ってるし、コイツ、アイテム費用出さないから。
財布がキツい。でも全部我慢だ。プライドで食い扶持を潰すわけにはいかない……。
---動画コメント欄---
《普通にシーカーとしてやれそうだけど無理なん?》
《オーパーツ無しじゃ流石に無謀。だけど魔法レベルとステータスの高さはトップレベルだから対人戦はクソ強いと思う。片腕無しとはいえ》
《美亜ちゃん、かわゆいけどA級としては下位レベルよな》
《だからサポーターの腕が光るんだろ? シーカーが優秀過ぎたらサポーターやること少なくなるし。サポーター君目当てで見てるんだからシーカーはこれぐらいでちょうどいい》
《S級とのコンビも見てみたい気もする》
《アビスちゃん辺りと組んだら敵なしよな》
《マジこの動画勉強になる。全サポーター&シーカー見るべき》
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます