幕間 囚われの姫

 カーディグラス城の玉座の間は、吹き抜けの大広間である。巨大なシャンデリアが三つも並んで、天井から垂れ下がっている。

 十段ある階段の最上段に置かれる玉座に、一メートルはある宝杖を地面に突き立てたアルジオーゾが、足を組んで座っている。

 長く平たい吻部、凶暴な歯を生え揃えた口、赤い鱗状の体表、外見はまさにトカゲ男だった。

 彼のすぐ右側にはビルタ、そして左側の地面で両膝を抱えるようにして座っているのは……


「気分はどうだソーニャ? 怖くて声も出せねえんじゃねえか?」

「……」

「ふん、退屈な女だ。姫なら姫らしく、泣き喚け」

「……」


 アルジオーゾは「チッ」と舌打ちをする。

 ソーニャは片足に枷が嵌められ、百キロの鉄球に繋がれている。

 アルジオーゾはソーニャの方を見てニヤリと醜悪な笑みを浮かべて、唐突に立ち上がった。


「ガハハハ、そうだ、いいことを思いついたぞ!」


 二メートル近くある筋肉質なトカゲ男が鋸歯を剥き出しにして高笑いすると、手に持っていた宝杖をソーニャに突きつけた。


「雷の精霊トールよ、其の身を流れる雷で敵を捕らえたまえ——スタンボルト!」

「——⁉︎」


 アルジオーゾの宝杖から放たれた稲妻が、ソーニャへと襲いかかる。その直後、彼女の全身に微弱な電流が走った。


「まだ気持ちいい程度だが、時間経過で強度を上げるぜえ。心地いい嬌声を奏でてくれよ。ガハハハハハハ」

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