幕間 手向けの花
デイジーとフェイはお目当ての花屋を発見する。
二人が近づいていくと、店先の花々にジョウロで水をやる店員が、こちらに気づいて応対してくれる。
「いらっしゃい。ゆっくり見ていってね」
赤茶色の長髪で、二十代半ばくらいの女性だ。
二人は色とりどりの花を端から順々に見ていく。
「どの花もええところがあって目移りしてまうな〜。フェイはどれにするか決まったの?」
「これとこれとこれにする」
フェイは三種類の花を指差した。
「おっ案外欲張りさんだね。そやけどええで、長旅頑張ったからね。買いな」
「ありがとう、デイジーおねえちゃん」
「ちなみにどういうところが気に入ったのか聞いてもええ?」
「うんいいよ。あのね、この花はね、とってもあかるくてね、げんきいっぱいだからデレクおにいちゃんににあってるなって」
ソレイユ・オルキデという名前の橙色をした花だ。
デイジーは、亡くなった者に香華を手向ける意味をフェイが知っていたことに、驚きを隠せないでいた。
誰かに見聞きしたのか、そもそもそんなに深い意味はないのか。いずれにせよ、他人を想う健気さに、つい目頭が熱くなった。
「それでね、この花はおかあさん、この花はおとうさんにあげるの」
「フェイ……」
フェイが選んだ花は、どちらもヴェルデ村ではよく見かける花だった。
この旅を経て、多くの死に触れてきたフェイは、両親と会うことが二度と叶わないこと察したのだろう。
デイジーは思わずフェイのことをぎゅっと抱きしめた。
「どうしたのデイジーおねえちゃん、どうしてないているの?」
「フェイはええ子や。ほんまにええ子やで」
このときデイジーは、フェイのことを今後の人生なにがあっても絶対に守ってあげようと、心に誓った。
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